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土地の時計よ
降頻るひづめの雨垂を
かえれ
公海より
私物が解き放たれた朝に
斧堤てわかもの還る
「夢を借りたから
その夢を今返します、」
夢が夢ならばこそ
サテュロスらは宴も闌
大層酔うた風情にて
空中鞦韆に
一跳躍
眉に皺寄せしかめつら
神話のなかの父親たちは
皆いかり肩
鉛白の頬に髭蓄えて
目が二つに鼻口一つ
いずれにしても
ご尊顔には違いない
「ほら、あすこに酔いどれが
モローの春の鋳物をたがえているよ」||
黒い昼、葡萄圃の、
旧市庁舎の広場には
顰め面のデュオニュソスが
苛酷な昼をとがめる頃合
葡萄の白い花こそが
あなたがたにはふさわしい
雑居ビルには狭い階段
噂では
エレベーターで焼死んだ
雲雀や燕、の宙返りが
緑の部屋で見られるらしい
腕時計の縁
円い銀盤のなかで
病死した少年が
果敢無くも薔薇園を育む所在
選出作品
作品 - 20200523_385_11911p
- [佳] 即興来駕 - 鷹枕可 (2020-05)
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即興来駕
鷹枕可