選出作品

作品 - 20200511_956_11879p

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魚(な)の話し

  コテ

 あんまり何も意識に埋もれない貴方のように魚(な)は。

貴方は、空を飛ぶと聞きました。
我は先輩に今も二キロのバケツ水を持たされて居て、
もう何年も反抗したっきりで、話をしようとも思いません。
怒られているのを、何故かを理由を敢えて聞かないで居ます。
「みんなが助かるからだよぅ。」貴方に教えて貰い、
「やっぱり!」と思いました。
我が其れについて腹立だしくしても、彼は苦笑いをして長い長い理屈を心から我に語り、我の顔面に問いかけるのです。その時点で全てが完了されたというか(完了されたわけで、)、其れで認めたっぱなしです。


 先輩も我も川を泳ぎます、此れがどんなに濁ってゐても。羽を紡いで服をあつらえる貴方と我は耐性というか身が違って、
貴方は川の水を一吸いすれば嘔吐がするです。我は黙りこくりました、貴方は多分嘔吐をします、言ってる意味わかりますか? 憤らずに理解して頂(くだ)さいな。


 貴方と我はファッション性も違います。
我は水を何層も重ねて、バサッと被るお洒落をします。
貴方は一方、物か何かを観察して、表記(表現)する。
布を切ったり貼ったり、若者はまるで糊付けするような事までして居るのを、
目をまん丸にして息を飲んで見ました。
言葉にしたら、我は朝(あ)の糊が羨ましく、悩んで手に取ってみました。

 それにしても貴方の所には次々となんぼでも料理を出す魚屋があると聞きました。
断らない限りなんぼでも出すのでしょう?

良いですな、ルールも風も。良いですな。
昔は貴方と我も、喧嘩があったようななかったような。こういうの何だったっけ? 守りのテツ、攻めの小太郎…。仲割れですわいな。
我はなんぼ云うても喧嘩が一番苦手で、思うにその時から水に潜って居るのかも知れません、何にせよ、貴方も我も我こそ美しいと思い知ると甲(こう)いうふうに文と形に為って、
もっと我が我を納める事が出来るのです。アングラ(こんにちは)。


(君がこれまで君であったからこそ、今の幸福がある事を疑うなよ。
見てや、わいは自分になど花を言わん。何故ならきっと男の方が花や。対して女は、男の仏様と為り候へて、そして笑え。かっこわるても生きていくのは理由がない。意義、主張に固唾を呑むけれど、辛抱する。
決して木で鼻をくくったつもりはない。例えばどんなにすぐれていると自分が思っても、魂や血などはどうせ成長のお道具ヤ、だからただ続けるのではなく、打って変わり変えるものなんや。且つ「変わらない」と見届けつつ。瓜の弦に茄子はならぬ。泡の恋こそ実らぬけれど、だからこそこの脚があるんや。)