選出作品

作品 - 20200215_058_11712p

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地下的憑依

  ゼッケン

思いやりにルールを変える力があるとは思えない
親切にした相手に親切を理解できる知性がなければ、彼もしくは彼女もしくはそいつらは
ぼくが屈服したと感じるだろう
あの鼻で笑った嘲りの表情をぼくに向ける
ルールを変えるのは暴力だと思う
予告なしの一撃
いわゆるキレルという行動だ
有効に使えば状況はだいぶ良くなるはずだ
ぼくたち、徒党を組んで集団でキレてみよう
ひとりでキレても無視されるが
3人以上でキレてみよう
6割の人々はぼくたちを無視できないだろう
だが、ぼくはきみたちが嫌いだ
いっしょに何かすることはできない
弱者は弱者を憎む
ああ、つまり、こういうことだ
幸福を求めることが不幸の原因なのだ
蟻になってしまえ
だが、蟻が幸福だとしたらどうするのか?
つまり、幸福な蟻になることは不幸だ
おかしな論理だ、論理がおかしいものをぼくは信じない
裏切り方も非論理的だからだ
したがって、ぼくにとってその裏切りは予告なしの一撃になるだろう
たとえ、きみよ、それが予想どおりだとしても
ぼくがきみを裏切るのはぼくにとっても予告なしの一撃だった
拳を振り下ろしている
そんな暴力の予感が甘美を孕んでいる
運行する地下鉄の車体には非実在知性がとりついている