コンクリート敷きの中庭に、海を葬った。
スコール直後の透きとおった日陰、
ホウオウボクの花びらを散らし、小指くらいの珊瑚のかけらを並べ、
水で書いたでたらめな文字で飾りたて、
イモガイの貝殻を目印とした
即席のお墓
の前を這うアフリカマイマイの跡
を撫でる風が、ブロック塀越しの目線のさきに、
海を蘇らせた。
部屋から漏れるローカルCM、冷蔵庫のモーター音、再放送ドラマのセリフなどは
漆喰とベンガラに縁どられた空に広がっては消え、
シダの葉に垂れ下がる水滴に映るのは、
緑の丘が並ぶ半島と、藍と白の貨物船のある海。
その風景をプロペラ機の影がかすめ、
やがて海鳥の舞う岸壁のへりが、太陽を食いつぶすと、
夜空の途方もない高さが
海を吸い尽くし、
星はプラスチックの破片と混じり合い、
月の生き物は廃油の虹模様に酔っている。
選出作品
作品 - 20191213_302_11615p
- [優] 便箋と海 - GROWW (2019-12)
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便箋と海
GROWW