開発された住宅地の中、取り残された島のような空き地には、低木やススキの株やら草々が根を絡ませ、みっしりと葉を繁らせている。
ネズミやヘビや野良猫が草むらにかすかな筋をこしらえて、それを人の子らがなぞる。曲がり角を大きくショートカットするために大人たちも通り抜け、人も通るけものみちができあがる。
近道を知らぬものたちを尻目に、藪の中に姿を消す。ススキの株を半周まわる。木の根がこしらえた段々を一歩一歩踏みしめて登りひょっこりと、草むらの上に顔を出したら、てろり、キツネのようにとび跳ねたい、心踊るけものみち。
野良猫の後を追う。カエルと出くわす。共犯者を互いの草分ける音で知り、譲りながらすれ違う。
日が暮れたなら怖くなる。おぼつかぬ足元を木の根が捉え、ヘビたちが横切り、目に見えぬバケモノが怯える頭にみち満ちてついて来る、来る、ケモノミチ。息を止めて駆け抜けろ。
空き地がとうとう均されて、新品の家が建つ頃には、通るけものも姿を消して、それでも楽しく懐かしい、あそこにけものみちがあった。
選出作品
作品 - 20191113_819_11556p
- [優] けものみち - 宮永 (2019-11)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
けものみち
宮永