選出作品

作品 - 20190817_623_11400p

  • [佳]   - 水漏綾  (2019-08)

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  水漏綾

美術室
香るはずのない
石鹸のにおいを
ざざと降る雨は
背負ってくるのか

肌が湿り
まとわりついている
普段の皮をふやかして
きみのまなざしは
素肌ではなく
モチーフでもない
剥がれ落ちそうな
わたしの
瘡をさしていた

洗い流されて
良い香りがするような
雨は存在を許されない
雨はいつだって
生乾きの古びた
コンクリートの匂いで
そこにあるものです



ああ
望まないはれがくる
わたしを照りつけるな
わたしを照りつけるな
わたしを
わたしをっ
見ないでください



雨は明らかにした
死んで骨になるうつくしさを
他愛もなく生ぬるいやさしさを
ともすれば激情のいやらしさを

油が跳ねる、
焼きつけられたことで
存在を許された
うつくしいわたし