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作品 - 20190809_522_11383p

  • [佳]  めざめ - 左部右人  (2019-08)

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めざめ

  左部右人

またたきを、ひとつ

捉えがたい欲動に追われ、
日々は、擦り減った寝床のように
たるんでいる。
台所の汚物に群れる
こばえの
愛おしいこと
やがて、私の寝室に
いっぴき、またいっぴきと、
このたるみに向かって
群れている。

嗚呼、時計は
刻んで(のどが渇くと)
刻んで(水道水を飲んで)
刻んで(はらをくだす)
長針を親指で回す頃には
「わたしはこばえにうもれていました」

またたきを、ひとつ

捉えがたい欲情に溺れ、
日々を、ねちっこい唾液のように
からめていく。
散乱した服を掻き分けるように、
いつまでも溺れていた。
……。(「……」)
……。(「……」)
(こうしておともだちがまたひとりまたひとりとへるひびです)

いつかまたたいている間に、
日々はめまぐるしい速さで
変遷を遂げ、
循環し、
またいつも通りの
めざめを迎える。

寝ぼけまなこで
めをこすり
こばえがうるさいと、
またたきをする。