選出作品

作品 - 20190502_815_11199p

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春でした

  水漏綾

あなたが混じると
脆い真鍮のような
色なきわたしの声でした

隙のないあなたを
美しいと思った。
そのわけは、
了解し得ない言葉の数々
句拍子忍ばせる語りのうち
どこまで届くのかを
あなたは知っているから

深淵にゆびさす
あなたのまなざしに
飢えて咳き込む春でした