選出作品

作品 - 20190209_733_11059p

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翡翠のペンダントをつけて

  深尾貞一郎

I昼
幼児が鏡の中に、
神からいただいた完璧を見いだし、小躍りして喜ぶ

田園のなか、緑の水辺に棲む
トゲウオのような{相互的ダンス}
そこには人間が生まれながらにもっている[触角]があって
これをさしのばし現実をつくりだしていく
マロニエの木の根っこのようなドロドロとした無意識を

フライパンで炒める


II夜
背もたれのついた古びた椅子
革張りの丸い座面に手を触れる
狭い部屋に突っ立ったままに想う
わたしのたましいは幾つも点在する
なめし革の光りを放つ整った鱗
ずっとそのままだ

陰影がわたしと踊った夜の草原
あれから待っている
それは感覚もなく肉を喰らう
体内を這いずる丸い目と巻きつく青黒いもの

シンメトリーの蛇たちは、わたしの首に絡まった人格
生きるとはわたしのものでしかないのなら
肉体は、ずっと星空も見ていないのに
この身体の容のなかで世界を創りはじめる