選出作品

作品 - 20190109_991_10992p

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不純のスープ

  帆場 蔵人

"私"が溶けたスープ
血の匂いを隠して
不純なばかり

鶏の臓物をとりのぞき
鍋には野菜と鶏を放り込み
煮詰めればアクがでる
とりのぞき、澄んでいく
不純物が、濁りが、とりのぞかれ
それでも純粋にはもどれない
怒りに濁り、微かな血の匂い
求めあいながら嘘をつき
純粋を求めてスープを作る

罵り合うなかで
殴られた血の味と
殴り飛ばした血の味の
等しさを知る

"私"というアクをとれば
はじめてあった瞬間の
純粋に近づくという錯覚と
繰り返されるスープ作り

あなたが好きなのだ、スープを啜り
呟く、つぶやく、その気持ちに
濁りはないのだけれど、純粋ではない
それはきっと仕方ないことなのだ
あなたとわたし、ひとつ鍋のなか
生きているから、あの日には戻れない
それでも繰り返されるスープ作り

温かなスープを
あなたと
分かち
あいたい