お母さんに逢うため、鳥のように羽ばたき、カマキリのように身構え、馬のたてがみのように揺れるメタファーは既に備わっている。
高鳴る心臓に爪先の雨を降らせた金魚鉢に沈む海を、抹殺した夏の暑さが、わき腹から漏れださないように、お母さんは色のまま化石になった。
清掃婦は道を汚しながら歩いている。地球の自転は岸壁に染みついた嘘をもみ消し続ける。季節をひとつ捨てる毎に、茜雲の色に砕ける波が削った、家の灯りが身にしみる。
母の海は青く、母の地は紅い、魚村は出汁のとり方が都会と違う。箸を並べる順番で子供は育つ。旅立ちの理由を、自分の箸を握りしめる癖にする。
列車は山脈をゆく。車窓がとても明るい。月光が星の意思を邪魔をしないよう、手のひらは夜を翳している。
お母さんのようなあなたは、あなたのようなお母さん。
車掌が座席に近づいてきた。そして聞いているのだ。
お母さんのようなあなたは、お母さんの切符ですか?
線路の上で車両は揺さぶられている。
選出作品
作品 - 20181105_022_10875p
- [優] 義母 - 北 (2018-11)
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義母
北