選出作品

作品 - 20180714_404_10592p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


あなたのせいという、陽だまり 二編

  本田憲嵩


   あなたのせいという

あなたのせいという
急速な風に吹かれて
青葉がつぎつぎと落ちるように
暦が落ちてゆきました

あなたのせいという
見えない伝書鳩が
ひと息いれる暇もなく
夏の星座の下を行き交いました

あなたのせいという
メロンクリームソーダ
あなたのせいという
金色の夕映えの中でたしかにつないだ手と手

そして あなたのせいとはいえない
このうすら寒い部屋の窓枠には
季節はずれの風鈴が
まだぶら下がったままで


   陽だまり

静止したレースのカーテンが夕陽をたたえて、切りとられた金色に
染まっているこの寂しさは、切りそろえられて強調されたおかっぱ
のうなじ、森の小径で縫うようにうつろう黄色いニ匹の蝶々、また
そのような視線、そそがれる陽だまりのなか、たしかにつないだ手
と手。きみの知りえない夕映えのわたしの色を帯びて、高い窓から
見おろすミニチュアのまち、観覧車の速度でおだやかな時間がなが
れてゆく、こびとになった恋人たちのはいりこむ、ちいさな街路の
迷路の世界、そして、レコードを回して此処に居てほしかった、や
わらかなみどり色のソファー。