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作品 - 20180407_331_10363p

  • [佳]  循環 - 松本末廣  (2018-04)

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循環

  松本末廣

浅黒く笑う卵黄が観察し
取りこぼしていく中で
生命へと還っていく
落葉を私と認識しつつ
独立した自然数 X と密約し
複合された虚数時間に論破を促して
故に君は
量産された設計情報により 濃縮されつづけ
製氷にただいなる純愛を搾取させていたのだ
渇いた恥骨に響く

階段は私の裏へと出現するもの

犯された風の鈍行な眼差しを
一定の座標へと誘導し 自らの背後へと
落ちていく
落ちていく
落ちていく
落ちていく
落ちていく

現象を止めておけば 私は生きてゆけるのです

嬌声が逆光し 病床ひどく
性欲を淫らな左手が
焼死体へと拒絶反応させていく
かさばらせた時間が
私のミトコンドリアから内膜を奪い
法則性を剥離し
撫で揃えられた荒野へと変化させたのは
親愛を結露させる程の惰性だった
愛を告げるその振動で
私は無数の死体を一列に並べ
世界を柔く束縛し 監獄する

銑鉄の一部となった
刹那に触れる存在は
世界の歪みを知る者
歴史となっていく私を視姦し
誘惑させると
殺生に気づかず混入していき
対消滅を引き起こす
後には 衝撃の酸味を残渣として居座らせ
熔解を梗塞し 孕ませていく
投げ出された自らの皮膚片と共存する様を見続け
循環する私を 優しく否定するのだ