選出作品

作品 - 20180402_149_10352p

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めんへら。

  田中恭平

 
 摩擦する身体
は、もう耐えられそうにない
と考えていたのに
気がついたら
幸福になっている
この不思議をコップに注いで飲む、
昔の話がしたくなった
もう歳だね
禁煙のはなしはケースワーカーに聞いた
その返答がまだかえってこない間
お目汚しの文章を読んでくれる?
きみに時間がないなら
きみだけのことを精一杯やればいいさ

桜の季節になると想い出す
それは闘争と遁走の桜であった
若くて財はなかった
ロックンロール・バンドのリーダーだったんだ
蛇がうねっているところを観客に幻視、
させることだってできた
ある日部屋に帰ってくると
部屋中の家具がひっくりかえっていた
癇癪持ちの女がやったんだね
当時から煙草以外はクリーンで酒もやらなかった
毎晩サティのジムノペディを聞いて寝た
電気も水道も止まった部屋で。

睡眠嗜好症なんだと思う。
部屋に帰らず、近くの公園の芝生で
寝たことだってある。
終電で眠って最終駅まで行っちゃって
仕方なくタクシーで帰宅したこともある。
御金はそんな風に使っていた。
今じゃ信じられないよ。
そして徐々に脳が弱っていったんだね。

煙草を喫っているとさ
嗚呼、これがドーパミンか、って
脳に意識を向ければわかるんだよね
嗚呼、これは適切な言い方じゃない。
でもまあ、いいか。
ドーパミンが全く出なくなって
鬱で死んでしまったひとのことを知っている。
大事なひとじゃなかった。
でも今じゃ彼をシンボルとして僕の喫煙はつづいている。
きみは煙草やらないの?
やらないにこしたことはない。
ニコチンってのはデビルの別称なんだぜ。

朝が来なかった。
わけのわからないことを口ばしった。
友人がきみは統合失調症じゃないのか?と言った。
僕は疎かったから、何を言ってるのかわからなかったけれど
精神科に連れていかれた。
そのときには完全に自分のことを日本国最初の人体実験被験者、
だと思い込んでいた。主にロケット関係の・・・・・・、
何を言ってるのかわからないだろ?俺だって今わからないよ、
診断は全般性不安障害だった。
最初から適切な診断が下ることはレアリティがあるもんだ。
自分が統合失調症だと診断してもらうなら正確に云えよ
「俺は、今、国家のモルモットにされかけている!」
でも
「クーラーの隙間に鬼の小僧が住んでいて喋りかけてきます!」
その誤診が悪かった、
薬の副作用でぶくぶくと太り始めた。80キロはあったかも知れない。
それでも平然と働いていたんだから面白いよ。
昼間はスタジオで働いて
夜になるとドラゴンと語り合って食事していた。
嗚呼、それは六月の都会の夜!

リーマンブラザーズの件で株価が暴落して
なぜかこのままでは死んでしまう、と思って
新幹線に乗って実家に帰った
それから二日は寝ていたようだ
癇癪女と友人たちとの永遠のさようなら!だ、
新幹線のなかでヤハウェを観た
今じゃ寝室に分厚い聖書が置いてあって
こころのどこかでナザレのイエスがわたくしを
御救いなさってくれる、と信じている、
敬虔な浄土真宗の家なのにね。

いつも思うんだ、物を書いていると。
なんで物を書いているんだろう?と。
ビート作家達だってそうだ、なんで
みんなそろいもそろって物を書いているんだろうか?
一種の個人的ベンチャーみたいなものか?
この日本語おかしい?まあ、別にどうだっていいけど。
もうword三枚分は書いてしまった、
ちょっと付き合ってもらうには長すぎるかな、

俺は、郊外で、ときどき東京の友人とやりとりしながら
よろしくやっている。
朝三時に起床して、Amazonの荷物と格闘している。
最近は財布を盗まれた。中には障がい者手帳が入っていて
そんなものを盗んで見る奴は絶対に地獄にいくと思ってる。
度々幻聴が聞こえる、俺はそれを無視しない
面白いことを聞いてくるからだ、かといって路傍で
笑うなんて絶対にしない。
最近も自失を考えたが、もう俺には大切なひとがいる。
嗚呼、もうめんどくせぇ、
この文章は全体的に失敗している。
俺はそれを知っている。
だが俺は一度書いたことを書き直そうとは思わないし
大体生活がよろしくやってるから、そんなことどうでもいいよ
ってな具合の関係ねぇパワーだ
アジールの向こう側で俺を罵る声が聞こえる
大丈夫だ、きみ、アジールは絶対不可侵だから
雨がふる、雨がふる、彼は風邪をひくだろう