早朝の穏やかな水面に
無意味な言語を浮かべれば
正しい方向を指し示して
いつかは真実にたどり着く
あるいは失ったものたちを
何もかも取り戻せる
などとという
蜃気楼のような幻想が
僕たちの信仰する
永久機関の正体だ
カビ臭い神の箱庭で
笑えない冗談ばかりを
ぶつけ合っている少女たちは
絶望をオブラートに包む巫女で
本当は本当の本当を教えてくれない
それを百も承知で僕たちは
遠浅の眠りの中に言葉を浸し
薄闇の去りゆく世界へと
心拍のリズムで波紋を広げる
(そこでようやく
自分が目覚めていないことに気づく)
また過ちを犯すのだろうと
心の隅では認めているのだが
水が氷になる瞬間のような
眩暈にも似た高揚感に包まれて
またしても僕たちは真実を否定する
とても容易く、躊躇いもなく
ノラネコに餌を与えるかのように
いつだって悪魔は魅力的に演説する
いつだって大衆は熱狂的に歓迎する
遠い過去の方角から
行進の足音が近づいてくる
高尚な何かを考えているつもりで
実は何も考えていない僕たちは
憎んでいるはずのものを愛し
葬ったはずのものと婚約する
そして再び朝がやってくる
同じ愚行を繰り返すために
僕たちは覚醒したふりをして
遠ざかる薄闇から悪夢を引き戻す
今度という今度こそ
夜にたどり着けないかも知れないのに
選出作品
作品 - 20180317_795_10321p
- [優] 早朝 - 无 (2018-03)
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早朝
无