選出作品

作品 - 20180306_423_10294p

  • [佳]  haru - 田中恭平  (2018-03)

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


haru

  田中恭平

 
 
ささやきを
おとなしくさせて
コーヒーカップのように静か暮らしてる、
パワーや
霊性は
そこらに散漫して、
春の庭先は穏やかです、
とまるで
サナトリウムからの
手紙のような詩を書く
こころは割れてしまっている。
楽しいことの余韻が
さめないうちに出掛けよう
瓶ビールを
川辺に冷やしにいこう
飲めないけれど、
楽しいから御金を払おう

そう考えたあとに
必ず溜息をついている
薪ストーヴ
火はついていない
火にゆるされることはできない
腹に手をあててみると
病が沈殿している
胃袋はくすりで冒された、
多分ね
スコール
彷徨う足取りは深く
一歩
一歩
溜息をつく

雪山山間のきれいな川に
これもきれいだが
こころない魚たちが泳いでゆく

林の
木と木の間に朝の月は在って
座していると聞こえる
こころない魚たちの唄、

突き動かされて
しかし何かに呼び戻されて
歩道に立ちすくみ
ついに瓶ビールを買いにいけない、

ふと
梅の花が咲いている
ひかりを受けてその枝先までの醜さを
反転、
させてうつくしい。

香を嗅ぐ。
目に映る草木すべての
帰するところが
観えたような気もして
からが、
春だ

こころない魚たちは
こころ捨てたことにより自由であるなら
わたくしは不自由で宜しい

確かに地に脚は着いて
車の走行音に目覚める、
痛みを持って
生を確認する
春だ!