(海の夜景を見送りながら
季節をたもつ寂れた線路に
ひとり揺すられ、どこへゆく
きみは)
(望みは絶たれ、ゆめのこだまは
波間に燃える閃きのかさなり)
(あかるい悪意をみなぎらせ
あらゆる風がそのために
天を削ってゆくのなら
結合組織の破れから
誰の帰路から凍えるか)(もう帰ろうよ
まだかえらないよ)(鐘が鳴ったよ
まだなってないよ)
〓
さかだった日射しがたちならび
翅のモチーフ
なみだを繋ぐ現象を
かなしみと名付け遠ざかる
きみは冷たく華やいでゆき
雨のなか レピダプテュラ
脚並みへ消える
(世界へかかわる
大気のあざとい氷結や
色を変じた幻覚などは
確約された祝福をもち
交差忙しい五月の上を
感触ばかり呼び覚ます)
(やさしく疲れた頰笑みが
わたしをいっそう惨めにさせた)
〓
黄昏に呼び声の躓き
風葬のレリーフ
嗤笑それぞれさめざめとし
見逃されている余白まで
染めあげてゆくのか
(May.2014/Moonrise)
双円燃える光の底を
まずしい眼つきを投げ噤み
夢想の仮死へながれて白む
ああ
欠かす景色を不朽のために
光陰のよるを巨大にしろく
また華やぎの風雪のもと
あばかれなければならないか
(線路の裂傷にとおい残響
そこへとどまる幼き影の
かりそめの纏まり)
〓
発熱をたより弛緩する
抑制のモジュール
約束された別れを語る
さよならだけが心のゆくえ
(あたたかく頬を撫で伝う
しずかになみだを繋ぐもの)
ああ
想起と憎悪に透明な
淋しい過去が密やかに
わたしの声をし泣いている
選出作品
作品 - 20180217_684_10259p
- [佳] 結ぶ五月の爪先を - 郷夏 (2018-02)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
結ぶ五月の爪先を
郷夏