選出作品

作品 - 20180217_678_10257p

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絶滅生理

  ゼッケン

ルール1.普遍的なルールはない。
ルール2.ルールに従うかどうかは私次第である。
ルール3.私は私が決めたルールには従わねばならない。

個別性と主体性しかない世界で
恐竜のすべてが鳥になった

カンブリアン・コード・グループは
人類の絶滅を予防するための手順集です、発動されると
人類の遺伝的、免疫学的、神経行動学的な多様性を促進します
壇上で喋っているおれに向かって、観客の少ない客席からひとりの男が立ち上がり、
男は胸に赤ん坊を抱いているようだった、制止する者はおらず、
男は壇上に上がり、おれの前に立った
殺してやると言う代わりに男は
胸の赤ん坊の頭部をすっぽりと覆っていた布の帽子を取った
上下2段になった左右の4つの目とそれらの中央にひとつある合わせて五つの眼がきょろりとおれを見た

完璧だ! おれは言った

おれは言った、小学校の頃からおれは教師に贔屓されるが友達はいないタイプでそれは
おれには何の関係もないことだった。地元に友達はいないので大学に入った
二十歳ごろの遅い思春期に恋をして恐れを知るとおれは
つまらない人間になった、大学を卒業して大学に就職してそれはいまでも変わらない
隕石が衝突したとき、恐竜類だけが滅んだ
サメもワニも生き残ったのに、T-rexは絶滅した

人類は!

滅びない!

絶滅は、多様性によって、回避される

恐竜よりもずっと前、世界がすべて海だった頃、カンブリア紀は美しかった
生物は幾何学によって進化した
狂気も多様に進化した
人類にも歴史と同じだけ狂気と想像力があった
カネは
夢を見させない
カンブリア命令は発動されたのだった
人類は
もっと、自分たちの可能性を信じていい、信じて、信じて、信じて、

知と理に絶頂する

完璧だ! おれは言った、成功です、おめでとう!
男は赤ん坊を片手で支え、残りの手に握ったナイフの刃を柄までおれの腹に押し込んだ
おれは吐き気を覚えた、吐いた、血がだらだらと口から出た
恐竜のすべてが鳥になり、つまらないものは絶滅した
これからは
誰とも比べられることのない、比べようのない、
美しい赤ん坊たちの時代が始まる
おれは腹にナイフを立てたまま、左右の腕を上下に打ち振った
翼は生えないようだった
薄くて硬い金属は腹の中で上下に振れて内臓をスライスした
翼を持てばもっと高いところから墜落できた