雨が強くなってきたので
二階の窓を開けて
平泳ぎで空へ飛び出した
こんなに雨が降るのだから
それくらいは許されると思った
だけど泳げるくらいの雨の中では
息継ぎが出来ないのでは、と
思った途端に僕は溺れた
上昇しようと思ったのだが
天国はあまりに遠かった
部屋に戻ろうとしても
雨が強くて何も見えない
必死でもがいているうちに
意識が遠くなっていった
皮肉なことにこうなってから
雨は少しずつ弱まってきた
すべてを諦めた抜け殻として
仰向けに浮かんでいると
僕のように空へ漂っている
たくさんの人たちが見えた
それは灰色の宇宙に散らばる
小惑星帯のように美しかった
「やあ、たくさん捕れたなあ」
意識が途切れる直前に
そんな声が遠くから聞こえた
本当に変な夢だと思いながら
僕は死の中で再び目を閉じた
選出作品
作品 - 20180210_426_10244p
- [佳] 雨を泳ぐ - 无 (2018-02)
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雨を泳ぐ
无