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作品 - 20180124_973_10200p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


月蝕より

  伊藤透雪

錆びた月光が差し込む夜
利き目にはモノクロームのネガ
反対の目に赤銅色が映りこんでる
窓辺で蝕の暗い赤が凍みる
シーツはあなたの匂いでいっぱい
さっきまで
当たり前の冬が柔らかく含まれ溶けていた
私はあなたを焼き付け続け何枚も記録した
今夜は脳裏をウィスキーが埋めてゆき
やがてひとりの時間に冷めていく
やけに虚しい
、、

ざわざわ這い上がり首筋から
締め上げてくる熱が額に集まっている
薄暗がりにあなたがいる
何度唇を合わせても
何かが足りない
埋めて埋めて繰り返しながら
あなたの顔を見つめても
何も言葉にならない
未熟な私の戸惑いを
あなたの瞳は射抜く
汗をかきながら
私は震えて呻いてしまう



自ら蝕んだ今と過去
を縫合して思いに潜っても
ざらついた自分は直ぐには変われない
それでも赤く月が上り始める晩には
理性を剥ぎ取る思いに抗えない

窓辺から月が薄く照らす寝室で
あなたの肋骨をさぐりメスで切開し剥離し
開いた胸に露わになった脈打つ心臓
の無垢な赤
開胸器から己のささくれた手で触れたら
あなたの命の喜びを中心で握る
押し込めた思いを切り裂いて放り投げ
あなたの白い肌を流れる青に変えよう
喉の音が掠れうっすらと滲んでくる赤は
私の悲鳴ともあなたの死とも分からない
闇に炎を昇らせてあなたを求めたら
私の中で輝く表情がうれしい
、、
私は今夜再びあなたを
白々と開けるまで解剖する
あなたの全てを知りたい
あなたの謎を全て開いてみたい
欲望を抱いて私はメスを握る夢を見る

文学極道

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