三年C組
義務教育最後の学校生活
クラスを受け持ったのはあなたでした。
快活な方でありました
自信過剰気味でありどこか昔気質を思わせました
物理を教える理系の出らしく白衣を着こみ
小柄ながらアルトのお声は張りがあり男勝りでした
鼈甲眼鏡の分厚いレンズの向こう側で団栗眼をしばたかせる
あの頃すでに定年を控えていたでしょうか
校内を忙しなく婦人用サンダルを履き練り歩く
口紅とアイシャドーをうすくひいた
生意気なツッパリたちとも堂々と渡りあう
だからだったのでしょう彼らも一目置いていました
そのようなお姿が折に触れ
心中に思い起こされるのです
そして卒業間近だったある日
教室へ行き春の訪れを伝えると
予想を裏切られたか大変に驚かれましたね
しばし唖然とされていました
あなたの眼が見開き私を見つめていました
出来のよくなかった
秀でるものがなかった私の顔に見入っていました
運
偶然
プライド
ユメ
実力
努力
キボウ
アコガレ
意地
・・・・・・・・・
今も窓際で
空を見上げています
年月が流れ私は
思い出をたずさえて生きています
その後変わりなく
御健在であられますでしょうか
卒業以来お会いすることもなく失礼をしています
いつかまたお会いできましたならと
そう願っています。
選出作品
作品 - 20180115_728_10172p
- [佳] 音信 - 湯煙 (2018-01)
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音信
湯煙