選出作品

作品 - 20171130_675_10058p

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ハルピュイアの柩

  白犬


刺す

透明な柩に

全ての 形式の形骸に
射す
静かに

柔らかな内蔵は
温かかった
啄む

高い
高い空は
とても冷たい

でも 私には翼があるから

あなたの内蔵は
生温く 温かだった

ハルピュイア
予め穢れた唇
喰らい
撒き散らす
糞尿を

ハルピュイア

密猟された魂よ
密猟する魂よ
傷と傷は癒着している
切り離せないそれを
私の嘴で
つつく
啄む
抉る
貪る

あなたのシャンデリアに
糞を落とし
きぃきぃと笑う

私 は ハルピュイア だから

風と同義
羽根を毟って
足を折って
私を殺して
息の根を止めて

きぃきぃきぃきぃきぃきぃきぃきぃきぃ

鳥の躰に猿の顔で 甲高く笑う

この世界は汚穢の花です
私の魂の奥深くに流れ続けるそれを
私の黒目は見つめ続けている
逸らすことは許されていない

あなたの
胸を抉り
血と汚物に唇を濡らし
晩餐を
微笑みながら
微笑みながら

糞まで喰らい尽くしましょう

そしてあなたの骨に 糞をして
私は飛び立つ
満月が美しかった
形式の形骸の空を飛んだ
散る 羽根
撃ち落とすあなたはもう居ない
私が食べてしまったから

交錯線
私の唇は歌を吐かない
私の嘴は笑いを吐く

ふいに
哄笑が止まらない
空を飛びながら
がぼがぼと
笑う喉から
血が溢れる
これは、あなたの血?
私の血?
私はハルピュイア

哄笑
哄笑
哄笑
白い花が胸から咲くよ
乳房を突き破り
あなたを食べたからだろうか

あははきぃきぃあははははきぃきぃきぃきぃあはははははきぃきぃきぃきぃきぃきぃきぃきぃ
キィキィキィキィキィキィキィキィキィキィキィキィ

地に 落ちる
空は 私の柩だった
もう 要らない

花が咲く
私は吐瀉物と血と泡を口から溢れさせ
裂けた内蔵から半消化のでろでろを垂れ流す
空に踊るウロボロスにキスをしようか

青い空を見上げて
柩が閉じていく
捻れた羽根で
千切れた羽根で
形式の形骸の頭蓋を撫でた

幸せだよ

柩の蓋が、閉じる

ハルピュイアの柩