選出作品

作品 - 20171118_415_10034p

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記憶iv

  goat


たとえば差し込んだ朝の光にまばたきするように鳥が訪れを告げたとして
たとえば寒闇にくしゃみをするように紛れた蝶が不在通知を運んだとして
その比喩に私たちは星が流れるような或いは願いという傷を託したとして
救いという器は言葉では満たせない
伸びる蔦のような
芽吹いた先になにをつかむのか
けれど冷えることをいとわない
あたらしいゆび


海をみるのが好きだった
今はと聞くと目をそらした
影だらけの町には
海の記憶の欠片もなくて
それは空だという人もいるけれど
私にはわからない


大きなお風呂場のようだ
とても塩辛く残酷に打ち寄せる
それは浮かぶ大きな嫉妬のようだ と
海を知る 鳥たちが落とした杖には記されてあって
子供の頃に担いでいたランドセルの
端から突き出したリコーダーが
勝手に風になるような
そんな不可能を想像したりもする
膝小僧を泥で汚したまま


自由だなんて簡単にいうのね
たしかな重みを引き抜きぬいて
そうして星がひとつ転がり込んだ夜
もどかしさが初めての煙草に似ていた
ひどぅんめもりー
虫食いだらけの肌色が
自由というケムリにほだされる頃
右回りに吸い込まれていく
ささやかれたくちびるが残像になる


あまりの残らない
割り算を教えてください
だいじょうぶ
言葉の縁が欠けているのに気づかずに
薄くながれていく血液の梢
落ちた小鳥がはらわたから腐っていくような
同類項に綴じられる憂鬱
またうらぎられるの
とても陳腐だ
とても綺麗だ
その匂いが海に似ているなんて
だれも教えてくれなかったね


瞳のなかに沈殿した
光がながれだすと声がきこえる
抱きしめると胸が汚れる
巻き取るように開かれた
未だ脂にまみれた指は
何かを告げる文字を描き出し
それはきっと誰も読めない言葉だけれど
もしかするとやがてこのよをにぎりしめるものかも
しれない