ゆううつの広がりが壊れながら吸い込まれていくあなたの手をとり
携えたのが8月のあかい空に焦がれていく一粒一粒のはまべの砂が
あなたとわたくしの手の隙間からひとつぶひとつぶ零れていくのを
モンシロチョウの白い鱗粉のなかから数えあげたしろいかなしみの
浮遊のなかでするどく、
こうして窓から見える小さな海の中に波頭のしろいろが飲み込まれ
なんどくり返しても同じ青さのままで風は強く、朱にそまることも
なく、その見えない運動に目をこらしているままわたしたちはすな
のなかに埋もれていく、硬く
そして10月のまだあわいくれないのきせつに熊手のなかで終って
いくものたちのいのちを数えあげること、なまあたたかいふぶきに
抱かれるようにしあわせにこの手をたずさえたままこおってしまう
ためにきせつがうつろうそのみえないうんどうをいつまでもみるこ
ともなく、きくこともなく、だけど感じているのです
このくにでいちばんさむいふゆをください、といのるゆびさきから
こぼれおちるすなつぶのひとつひとつをかなしみとよびよろこびと
よび、とおりすぎるきせつ、かぜ、モンシロチョウのしろい浮遊を
うたいながら、そうです、うたいながら、
選出作品
作品 - 20171010_508_9951p
- [優] 砂時計 - 芦野 夕狩 (2017-10)
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砂時計
芦野 夕狩