選出作品

作品 - 20171005_419_9937p

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Mein Sohn, was birgst du so bang dein Gesicht?

  atsuchan69

錆びたトタンの切れ端を腹に巻いた彼には、まだ、顔がなかった。二十もすぎて今更もう顔なんて要らないよォ、という。が、顔がないので当然、話すのにも口がない。にもかかわらず、「家に住むのに屋根がナインだよ」とでも言いたいそぶりで小指を一本失った右手を左手と揃えてパーをニギニギしてみせる。きっと自分の頭のなかが、世界中の誰もと同じだという類の酷く大きな勘違いをしているのだ。「トタンの切れ端が、アンタのいう『屋根がナイン』そのものだったのに」と、きっぱりとボクは本当のことを言ってやりたいのだが、彼はよく澄んだ秋空を両腕で大きく仰いで【魔王】の「♪かわいいぼうや ぼくのところへおいで 一緒に遊ぼうよ 楽しいよ!」のくだりをテレパシーで歌いはじめた。やがて哀しみの時間が一枚、そして一枚、硬い鱗を剥がすように相対論理言語の深い闇の淵へと落ちてゆく。「それでジジイと孫との近親相姦のホモってどうなの? ランボーとヴェルレーヌみたく、最後にはどうしよーもない刃傷沙汰の修羅場が待っていてさ」――あーん、バキューン! 「さきっちょ、ぺろぺろ」ということで、何? ボクの発言は恐ろしく真面目でユーモアなんて1ミリグラムも含まれちゃいない。また、作品に向かう姿勢を明確に定義している以上、参加者にもユーモアなど一切認めない。例えば、あのとき鳴海清も若かったが、むろん組織的には制裁を止めることなど出来なかった。二十歳の峠を越えたら十分「大人」である。それにたぶん、ここからは別の話になるのだが、軍部の連中の大半はといえば、志は高いのだが、いささか感情年齢が低すぎて困るのである。――あっ、言っちゃった。 削除だ! 削除! 旧帝国陸軍の悪口は言ってはいけなかった。じゃあ、戦後生き残った【あいつら】なんか錆びたトタンの切れ端を腹に巻くどころか商業用原発50基を地震の巣の真ちかくに建てて「ぜったい安全です」なんて言っているそばから数基が重大な事故を起こし、放射能ダダ漏れなのに平気で毎朝牛乳飲んでいるし、そりゃあもう諸外国からみたら核爆弾を腹に巻いて「やれるもんなら。やってみろ、バカ野郎」って感じで世界最終戦争へたった一人参加する可笑しなチンピラに他ならないわけだよな。だから結局、全世界に散らされた忍者だとか徳川家へ行きついちゃうんだけど、超ウラン核種を含む放射性廃棄物の消滅処理が可能になれば、【あいつら】は自分たちの未来の崇高な役割を知って少しばかり興奮するだろう。こうして、誰もが信じたものが奇怪な真実となって歴史は捏造され、赤字だらけの特殊法人等の隠れ家を知らない錆びたトタンの切れ端を腹に巻いた彼には、まだ、顔がなかった。