咽喉を刺激する大気、
サビて崩れる鋼鉄の、
強靭な幻が都市を支え
静かに腐食してゆく世界、
やがて酸性雨を降らせる雲が西の空にたなびいている
その曇天の真下、
複雑な曲線と直線の交差するハイウェイ、
装飾のかけらさえ見あたらない
肌もあらわなコンクリートの柱たちが幾千もつづく
あまねく全地を覆う瀝青の暗い景色に、
人はいない
心地よいエンジン音に吸い込まれてゆく息づかい
ボディの派手な紅緋の色とは裏腹に、
黒革のシートの鞣した獣の匂いが興奮を鎮める
疾走するメロディに満ちた快適な室内に幽閉された/からだ
そして背後へ
熱い毒気を吐き出しながら
458スパイダーは産業道路をひた走る
やたら行き交う、
土砂を積んだダンプカーだの、
タンクローリーだの
巨大なトラッククレーンだのが
音もなく後方へすぎてゆく
まるで乾いた夢のように失われた/心は、秒を数える
( 浮遊する、
六価クロムの剥げ落ちた鍍金(メッキ)片が煌く
黒黴に覆われた日常という壁紙の裏側に
吊るされた愛/情事/が記録される
十秒と少しで開くルーフが、
今しも内と外との隔たりを壊す//
たちまちリアルな不快さと 硫黄の燃える匂い、
凶暴な機械たちの激しく軋む、音/悲鳴、
「 儚すぎるわ!
呪いにみちたルートを昼も夜もなく
結ばれるべき線と線を互いに探しあぐねて
幾度もあてどなく交わる
紅い、コンバーチブルの軌跡
吐き気と眩暈。
背徳の鈍い痛みを覚える、
ただ束の間の、、
選出作品
作品 - 20170925_323_9919p
- [優] 産業道路のコンバーチブル - atsuchan69 (2017-09)
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産業道路のコンバーチブル
atsuchan69