選出作品

作品 - 20170925_323_9919p

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産業道路のコンバーチブル

  atsuchan69

咽喉を刺激する大気、
  サビて崩れる鋼鉄の、
      強靭な幻が都市を支え
         静かに腐食してゆく世界、

 やがて酸性雨を降らせる雲が西の空にたなびいている

  その曇天の真下、
 複雑な曲線と直線の交差するハイウェイ、
 装飾のかけらさえ見あたらない
 肌もあらわなコンクリートの柱たちが幾千もつづく
 あまねく全地を覆う瀝青の暗い景色に、
     
     人はいない

 心地よいエンジン音に吸い込まれてゆく息づかい
 ボディの派手な紅緋の色とは裏腹に、
 黒革のシートの鞣した獣の匂いが興奮を鎮める
 疾走するメロディに満ちた快適な室内に幽閉された/からだ
 そして背後へ
 熱い毒気を吐き出しながら
 458スパイダーは産業道路をひた走る

 やたら行き交う、
 土砂を積んだダンプカーだの、
 タンクローリーだの
 巨大なトラッククレーンだのが
 音もなく後方へすぎてゆく

 まるで乾いた夢のように失われた/心は、秒を数える

 ( 浮遊する、
   六価クロムの剥げ落ちた鍍金(メッキ)片が煌く 
   黒黴に覆われた日常という壁紙の裏側に
   吊るされた愛/情事/が記録される

 十秒と少しで開くルーフが、
 今しも内と外との隔たりを壊す//
 たちまちリアルな不快さと 硫黄の燃える匂い、
 凶暴な機械たちの激しく軋む、音/悲鳴、
           「 儚すぎるわ!

 呪いにみちたルートを昼も夜もなく
 結ばれるべき線と線を互いに探しあぐねて
 幾度もあてどなく交わる
 紅い、コンバーチブルの軌跡
 
     吐き気と眩暈。

背徳の鈍い痛みを覚える、
            ただ束の間の、、