ゆうやみこみち
こずえにかかる
あかいふく
女が ひとり
風にとばされたい
とすすり泣く
ガラガラとなく、よる
ひとひと 小雨か、ふぅていた
落ち葉の隙間に、ふと
朱塗りの櫛を見つけた
拾い上げ
ほほにあて
櫛削る針先を
指ではじいた
ガラガラと
ガラガラと、
白く曲がりくねった塀の
雪の線が描く枝の木陰で
その子の落した
髪梳く櫛を
わたしは、
もどした
身をかがめ
落ち葉のなかに
そっと埋めた
小雨の降る杜の夜気
こずえにかかる
あかいふく
ガラガラ、
と、風にゆれ
今にも飛ばされたい
と、ちきさな、梢を
すすり泣く
ガラガラ、と
ガラガラと
ふきてはまた
すすり泣く
小雨か、梢を
ふぅていた
、
選出作品
作品 - 20170904_057_9882p
- [佳] ある女の - 玄こう (2017-09)
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ある女の
玄こう