駅前の来来軒で
ぶどうパンを三斤買って
その重さに
前のめりになりつつ
足早に歩く
パンと私を
天秤にかければ
明らかに
わたくしの方
が
重い
ぶどうパン三斤で
沈むか
この身体
夕べ、スマホが
けたたましく鳴って
「明日心中を決行する」と
メールが来た。
今年に入り二度目の
決行予告
(23:08)
かったるい
日時:明日
場所:川
参加人数:2人
持ち物:水着、ぶどうパン三斤
備考:雨天決行だよん
だから何で
ぶどうパン
水着もこれ相当おかしいよ、
などと返したところで
返信は無い。
2時間ほど歩いて
街外れにある森の
階段を
16段上って87段降りた
濃紺の改札を通り
地下鉄に乗り込むと
ワカメが車両狭しと
生い茂っていた
利用者の立場に
全く立っていない
運営ぶりである
吊り革のように
ぶら下がる
酸素ボンベを
口に当てると
浮き上がらないように両手で
しっかりとパイプを握った
海の真ん中に川は無いと思う
海の真ん中に川は無いと思う!
階段を87段上って16段降りるべきだった?
ワカメが頬をなでる
黒い大きな影が
窓の外を通り過ぎていった
(15:08)
「まだ?」
「遅いよ」
「今日はもう止めるよ」
そう言い残して
スマホが先に水没した。
選出作品
作品 - 20170630_286_9714p
- [佳] 心中に予告、心中に遅刻 - 紅茶猫 (2017-06)
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心中に予告、心中に遅刻
紅茶猫