選出作品

作品 - 20170516_962_9619p

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刺し違え

  北岡 俊

詰め込みすぎた、最初の1分
荷を下す暇もなく
秒針の速度の差に
あれは不良品なんかじゃない
生き埋めのような絶望は
偶然でなく
軽い靴底を補填する

空白、いったい何色に見える
怯える指先は体温を忘れ寒さに触れる
乳房から引き剥がされた嬰児は
断ち切られた食に泣くだけだろう
愛着なんかじゃないさ
生きるための涙でしか、
その空白は埋まらない

一つずつ
片付けてこう
ゆっくりと、
飲み込んだ唾液が
喉元で熱に変わるくらいに
ゆっくりと

何も考えちゃいない、
火のついた時計が
燃え尽きた後に焦るんだ
燻る火は軽い吐息で払え
聞いてるのは見覚えのない
やけに狭い背中だけ
最後に見る
それがやつらの景色だ

スキャパの味はもう忘れろ
後悔と一緒に打ち寄せてくるから
あいつはここに
とどまらないという
通り過ぎていくだけなんだそうだ
だから表情は想像しか頼りにできない
もう満足だろ
それなら、あとは待とう