選出作品

作品 - 20170408_921_9542p

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複雑な工法

  黒髪

眼球の表面は光に満ち薄い赤色に輝く
工法がわからない建築物は
夜空を埋める星の瞳にも届くだろう
疑うならその核を飲み込んだあとで
いやな感じだったら吐き出せばよい
愛しています
言ったことはない
愛しています
頭の中で考えた
不確かなナイフは何に使える
悲しいイメージにつながる危うい力使い方がわからない
涙を掬うスプーンで
赤子は不器用に生きることをする
なぜこんなにアンバランスに
なぜ全てが苦しみの中に崩れていく
生きていくことに自信を持っていない
疑うなら
やや仄暗い心のバオバブの作る影の中の
一生のあいだ崩れない
体の真ん中にある喜びと悲しみとの飽和が
再び帰ってきた
優しさのある子供たちのための永遠なる未来
私は何かを食べる
私は何かを受け入れる
何もなくて干からびる
心が潤った新しい日々の
埋められていく海の果て
海の果ての果ての果て
嵐が去って凪いだ海の果てにあるもの
輝く愛の階段を上って
世界の輪郭に行ける橋を架けよう
上空はいつも晴れている
失うことの怖さに縮こまらせた身が
海の果てを夢想し
いつでも雲の上に行ける橋の工法を知っている
論理的でない蟻の行列についていく
恐らくはみんな力を合わせていく
論理的な工法の書いてある羊皮紙を開き
夢は一段と自由な唇を開閉させる