夕暮れどき
一日の仕事を終え
石段を弾むようにかけおりて
家路へと急ぐ、うしろ髪を簡素にたばねた初老の少女
時刻を告げるためのモノラルのスピーカーが
懐かしい音楽の一節で
夕暮れのあたり一面をよりいっそう強く燃えたたせる
太陽は沈みながらも赤く膨張する
それはまるで、これからおとずれる夜に向けて人々の胸に
火を灯すために
だれもいない小径
注がれる赤い陽だまり
そこにいる筈だった
つないだ手と手、
視線はときおり
黄色い蝶のように移ろって、
きゅっ、と
そのやわらかな手をつかみ取った
太陽は沈みながらもさらに赤く膨張する
はげしさに、かがやく、それは命だろう
選出作品
作品 - 20170123_546_9414p
- [佳] 夕暮れ - 本田憲嵩 (2017-01)
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夕暮れ
本田憲嵩