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作品 - 20170111_337_9399p

  • [佳]  公園 - 芥もく太  (2017-01)

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公園

  芥もく太

腕時計を見たら午後2時半だった
小さな公園があった
もう秋風は冬風に押されていた

綺麗な滑り台があって
ブランコには小さな子供が母親と遊んでいた

私がブランコに向かうと
母親は慌てて子供をベビーカーに乗せ
過ぎ去って行った

ブランコに乗って漕いだら
椅子が低くて膝が土に擦りそうになり
私は思わすブランコを止めた

少し離れてベンチがあった
そこにはまるでホームレスのような老人が
鳩に餌をあげていて

こちらを見て前歯が一つ欠けている口を開き
優しそうに笑っていた
老人は公園に溶け込んでいた

不思議な感覚だった
幼い頃の私には公園は無限大の広さで
溶け込んでいたはずだ

今の大人になった私には灰色の都会の喧騒の中
公園は異様な空間に感じた

腕時計を見たら午後3時5分前だった
私はブランコから立ち上がり

公園は吹く風の季節を追いやるだけでなく
人間の刻む時間も追いやるのかと思い

公園の存在を心に問いながら
仕切りの役目をしている白い壁の向こうにある
待ち合わせの場所に歩いて行った