選出作品

作品 - 20161112_981_9263p

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全国の女子高校生のみなさん

  泥棒


こんにちは

全国の女子高校生のみなさん

僕は変態です

みなさんは文学というものに興味はありますか

僕はありません

正直まったくありません

がっ、

どうやら文学というものは

日常にあるそうです

そう

例えばコンビニ前とか

線路の向こう側とか

普通にあるそうです

みなさんも学校帰りや部活帰り

遊びへ行く途中など

コンビニへ寄ることがありますよね

そこにあるんですって

文学がっ。

店内ではありません

店の前です

そこから見えるいつもの風景の中に

あるんですって

すでに

もうあるんですって

なので

全国の女子高校生のみなさん

もう図書館などへ行く必要はありません

勉強もしないでよろしい

街へ出ればいいのです

本当です

変態の僕が言うことに間違いはありません

そう

僕はたくさんの本を読んできました

いわゆる文学作品です

そこには胸に刺さるたくさんの文学がありました

読めば読むほど

僕は変態になりました

ある日

いつものように本を読み

ますます変態になった僕は泣きながら家を出て

コンビニへ行きました

春でした

さっきまで読んでいた本の中は冬でした

街は春でした

本の中では

コートを着た主人公が自殺しておりました

つらかったろうに

寒かったろうに

雪の上でした

僕はコンビニ前から見えるその風景の中に

花をみつけました

手にとって

そのまま家へ帰って

死んでしまった主人公のページに

その胸に

花を刺しました

冬でした

本を閉じました

閉じても本の中は冬でした

僕は変態です

全国の女子高校生のみなさん

みなさんは生きてください

生きて

たくさんの本を読んで

勉強して

いつかたくさんの花にかこまれて

死んでください

文学はみなさんのそばにあります

全国の女子高校生のみなさん

みなさんの孤独は

ひとつとして同じものはありません

孤独とは秋の空です

きれいです

共感とは夜の細道です

きけんです

全国の女子高校生のみなさん

僕は変態です

線路の向こう側で

いつかお会いしましょう

全国の女子高校生のみなさん

安心してください

みなさんにお会いする頃には

僕はもう変態ではありません

文学です

文学そのものです

ほら

線路の向こう側は夏です

もう夏なのです

まぶしい

きっとたくさんの花が咲いているでしょう