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作品 - 20161001_828_9147p

  • [佳]  #01 - 田中恭平  (2016-10)

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#01

  田中恭平

 
ぼうっと、橙の灯りが雨霧にさびしがっている
かあちゃんに連絡入れとけ
って
エアロスミスの「Mama Kin」 聞きながら
俺はTシャツの二枚重ね着
加えてカーディガン灰色に腕を通し
飼い猫が
またどこかへくわえ運んで
靴下が見あたらない
今朝はとても寒い

疲れた眼を
労わりながら
ラッキー・ストライクを喫うと
季節外れの油虫が
すっと縁側を抜けてった
新しい朝は
また
いつもの朝へ変わってしまう


そして
僕はこんな詩を自然朗読していたっけ



 弥勒

モランは日本の古い動画を見ている
モランは「yasu kiyo」の動画を見ている
Yasu はこちら側を向いている
その笑顔は、どの学校にも必ず一人はいるような
それは、ここにいることそれ自体の嬉しさ
Yasu は
みんなに僕がみえているかどうか
いや、ときどきは、僕はみんなのことなんて見えないから
「Megane! Megane!!」
どっちにしろ
一方通行、だった

モランは日本の古い動画を見ている


イエス・キリストの実際の顔とされる
浅黒い肌の鼻の少し低い男の写真を眺める

ロバート・ジョンソンのCDを
わざとテープへと取り直し
その音源を流したものを
簡易レコーダーに吹きこみ
インポートし
8ギガのipodの
白いヘッドホンで、聞いている


精微され
全ての価格が上昇した
至るところに
十字路はあるが
かつて嘆かれていた
他国それ自体の教会を
捜してもない(のかな?)

この国の教会自体、それは
至るところにあるけれど
私の眼には四辻
こそ
こころそれ自体なんだと
足を
ドン!
ドン!
踏み鳴らした
血流が上がる
息が上がる
脈のスピードは人と
違ったり同じだったりするの?
左腕の脈の
 トクン トクン を眼を閉じ
確認すると
わたしたち は複合(=ポリ)していると
考えることはできるれど 
冷凍された 
脈のない人間を今後
証明の内へ入れるか 否か


  弥勒 は 
mean to a rock なのか
牛乳 
なのか・・・
今も一方通行の違反に人がいらついたり笑ったり



最近は
何もできないことへの自負に
一本の道にだって涙もろくなって困る
まっすぐ進んでいくのに
すれ違うあなたがいなければ困る


 大人だろう
 勇気を出せよ、か

 ぼうっと、橙の灯りが雨霧にさびしがっている
 本当はもうあまり考えたくはないのに
 このうつくしい百日紅は
 うつくしいなあ
 と

 きみへメールを送ってみた



 
気にしない 気にしないで
大丈夫だよ
気にしない 気にしないで
ここが今だから
ここがすべての今だと僕は願うよ


すべての子ははじめてのあなたのひかり
すべての子はあなたの空
すべての子はあなたの人生


私に気づいてほしい
私のことは知らないだろうけれど


なぜそんなに言葉ばかり読むの

これは私の番、みんなもずっと
出発だろうと 途上だろうと
誰もできはしないこと


いつも いつも
でもそれは私の夢 僕の夢
すべてのとき すべての人生で
あなたがすべて


俺は本当は薬なんてとりたくないし
ワインの味なんて知らない
きみの彼なら知っているだろ


雪が降るのを知っているくせに
いつも新聞が読めるのならば


それでいいだろう もう少しだけ眼を信じていたい
ぼうっと橙が
雨霧の中にあたたまりながら

おっと
午前九時になったら、缶コーヒーを買いに
外へ出よう そして
休館日の図書館の前で
うまく笑えたのなら 嬉しい


 マジで