選出作品

作品 - 20160712_735_8957p

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酷評の嵐

  泥棒



僕の生まれた街は
梅雨が明けると
酷評の嵐がやってくる
簡単に超高層ビルも崩れるし
電車は止まり
車は爆破され
街は死体の山となる。


僕の生まれた街は
梅雨が明けると
酷評の嵐がやってくる
純粋すぎて
歪んでしまった感性に
耐えられない者は去り
染まらない物は潰され
共感の花は散り
山はけずられ
鉄が飛び交い
壊れたロボットのようなビルが
過去を美化しはじめる。



酷評の嵐が過ぎ
誰もが最初に見る景色は
それぞれの故郷に似ているなら
みんな
この街を呪えばいい
それを栄養に
ビルは高層ビルとなり
やがて超高層ビルとなる。




酷評の嵐が過ぎ
君と僕の関係が
今より複雑になれば
この街で
いつか出会えるよ
超高層ビルの屋上から
2人で
この街のすべてを酷評しよう
君と僕は
2人ではない
永遠にひとりだから
きっと誰からも
共感なんてされない。