温泉に入ると
深く広々と湛えられたお湯が
私を首まで飲み込んだ
温泉の広さと深まりを前に
これが私の水位
これが私の容量
これが私の精神
これが私の闇
これが私の歴史
これが私の栄光
これが私の傷
と知らぬ間に対応させていた
温泉には私の全てがあふれかえっていた
そんな温泉からあがるとき
私はお湯をそっくり捨て去って出て来た
私は自分のなにもかもを
温泉のお湯として投げ捨ててきたのだ
これから新しい私が始まる
選出作品
作品 - 20160628_137_8911p
- [佳] 温泉 - zero (2016-06)
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温泉
zero