抗癌剤の治療を終え
疲れてヤニだらけの古いアパートに帰り
湿った布団に兎のように包まって寝る
悪い夢でも見たのか 
早朝に覚醒をする
寝汗で背中がやけに冷たい
最近はよく寝汗で起きる
早朝の駅の近くに買い物に行く
駅前の雑踏は烏が鳴きながら 
残飯を狙い飛び回っている
私はスーツ姿の人を見る 
売店で新聞や雑誌を買う人たち 
慌てて煙草を吸う人たち 
飲み物を一機に飲み干す人たち 
 みんなバラバラのようで 
時には蟻のように 
時には波のように 
結局は纏まって 
押し寄せる来る
全ては会社勤めの人々 
 私は人々の顔を見る 
皆 今日の仕事を考えている 
私はそれに憔悴する 
流れの波に足が動かず止まる 
 むしろ後ずさりする 
 なぜ私ひとりが人々の波に 
逆行しているんだ 
夜と朝の狭間で生きている 
夜と朝の狭間で身動きが出来ない 
私は知っている
仕事の圧力に潰れ
烏の白い糞が頭に落ちたことを 
生きる意味を忘れて
流れる背中の汗に 
今日も焦燥し続けている
自分がいることを
	
選出作品
作品 - 20160627_095_8909p
- [佳] 雑踏 - 芥もく太 (2016-06)
 
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