「強い風の歌を聴け」
去年の春頃かな
絶望www
君が
そうツイートしてから
僕は
もう一年近く
絶望をストーキングしている
液晶画面に映る文字だけでは
本当の君を知ることができないけれど
僕は本当の君より
やっぱり
本当の絶望を知りたい
絶望www
そこに芸術があるだなんて
そんな考えは持っていないけれど
絶望www
僕は
もしかしたら
絶望より
www
こっちの方が気になっているのかもしれないね
絶望www
ほら、
東京郊外
その上空
wwwに見えなくもない雲が
いや
鳥が、一羽、いる、いた。
戦闘機もミサイルも見えない
鳥が撃ち落とされて
ワイファイが飛んでいる
僕は
誰のフォロワーでもない
絶望www
手軽なショートムービー
僕の詩では
伝わらない情景
いかにもな夕暮れを激写
絶望www
青い黒歴史
もしくは
黒い青歴史
(な、なんて、かわいい街なんだ、
殺伐とした郊外
それでも
だって
君がいるんだぜっ!
行けば
風に吹かれて
強い風に吹かれて
めっさ強い風に吹かれて
あっけなく
僕は泣いてしまうだろう
あの街はかわいい
君がいる
そう思うだけで
あの街はかわいいのです
君が好きすぎて
行くと死にたくなる
それが、あの街なんです。
「ミスター不謹慎」
にぎやかな街
ここで
俺はみんなから
あ、
みんなっつっても
ま、
3人か4人くらいだけど
みんなから
ミスター不謹慎って
そう呼ばれてるんだよね
そ、
詩なんか書いてる場合じゃないっつって
無駄に吠えて
そ、
月には吠えない
で、
海が汚れた春も
詩なんか書いてる場合じゃないっつって
ビルが崩れた夏も
詩なんか書いてる場合じゃないっつって
入院した秋も
詩なんか書いてる場合じゃないっつって
もちろん何かあった気がする冬も
詩なんか書いてる場合じゃないっつって
いつも
お前は逆に不謹慎だと
そう言われながら
生きてきたんだよね
そ、
不謹慎か
不謹慎じゃないかで言ったら
そりゃもう不謹慎
めっさ不謹慎
そ、
だから俺の出番
ね、
芸術は
そもそも不謹慎なものだって
フランスかどっかの哲学者が言ってたじゃないの
え、
知らない?
日本にもいたよね
小説家だっけ
そ、
芸術は弱い者の味方だとかなんとか
そ、
祈るばかり
そ、
役に立つ詩なんか
それ、
もはや詩じゃないよっつって
そんな
ミスター不謹慎な俺が
生まれ育ったのが、
にぎやかな街
そ、
つまり
この街である。
「水槽より浅く海より深く」
比喩禁止令が電線に止まっていた鳥やロータリーにいた人々に発令されたのは夜だった。鳥は消え去り人々は言葉を失い最終電車の窓に映る生きている者は皆、電車から降りられなくなった。そして、その街に限らず、どの街もいずれ編集されるだろう。朝がくる前に様々な出来事が形となり伝えられるだろう。水槽よりも、はるかに深い闇。その表面で静かに折れる光。風はいつものように孤独を奏でながら吹き抜ける。誰のためかは、わからない。街よ、どこが痛む。海は泣いているのか。祈ることしかできない。あの街この街その街。むきだしの街。それが海にかこまれている一夜明けた、その街の姿である。
選出作品
作品 - 20160423_132_8774p
- [優] あの街この街その街 - 泥棒 (2016-04)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
あの街この街その街
泥棒