選出作品

作品 - 20160309_117_8677p

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夜空の彼方

  fiorina

少し遅れて教室に入ってきた洋平先生が言った。

「さっきのクラスでね、一升瓶にためた水を捨てて、みんなで片付けようとしてたんだ。
すると、ひとりの男子生徒が、逆さにした一升瓶のおしりをこうやってぐるぐる回してるんだ。
どうしてそうするの?って聞いたら、
わかりません、ただ、こうすれば早いんじゃないかと思って、というんだよ。」

先生は口をつぐんで、少し頬を紅くした。
生徒たちは、突然の謎のような解答のような話を黙って聞いていた。
そして
洋平先生はきっと、理科の先生であることが嬉しかったんだ、と思った。


        *


数学者と物理学者の偶然の出会いから、遥かなる素数の謎が解明されようとしている。

この宇宙の最も小さいものと最も大きなものが螺旋を描いてつながっている。

星空を見上げる私の目に、

回転する一升瓶の口から光る水流が勢いよくほとばしる。

洋平先生と私たち、あのとき出会ってましたね。

渦巻きって、やっぱり偉大でしたね、と、

認知症を少し患ったあとで亡くなったという先生に語りかける。


(少しなおしました。16/03/09 23:15)
(元に戻しました。16/03/27 16:58 )