窓枠から見えた空/まるで昨夜の憂いを抱き留めたよう/な、乱層雲
雨/に昨日/を忘れるよ/そこから始めよう/人々/の歌うような足音/が街へ続く橋を渡る/瀬よ/、誰を癒さんとして流れ続ける/私を追いこしてゆく/一人一人/のビジネススーツ/が風にはためいて/、きれいな黒い鳥みたいに見えた
帰り道/橋の両脇に灯る外灯に/閃きながら落ちていた冷雨/疲れ/、涙と熱が混じる目/歩道に泳いだ視線/靴の先でぱたぱた/、と/瞬きを上回る速度で/咲く/黒い花
湿度をはかる/ように/いちど深呼吸/したら/傘を開いて/もいいですか
重い鞄を支えながら/いつかこの日々が雨に錆びるよう/に壊れるのではないか/と考える/けれど私は/まだ歩いていた/この荷物をおろせば楽になれると/誰もが/そう/知っている/それでもそうしない/のは/理由/が特に見当たらないせいだろう
道路は一瞬の渋滞/整列したカー・ライトがフローアップして/誰かの外した首飾り/のように/一様にきらめいた
区間急行バス/に乗り込めば革命/の予感/コートのポケットに/いつかのチョコレート/を紛れ込ませて
欠け始めた月を/古いカメラに納めて/トンネルから吹いた風に酔う/今日もとりたてて変化はなかった/ついこの間/アクアシトラス/とは何かな/と手に取った消臭剤/はかき氷のシロップにそっくり/な香りだった/今頃その香り/でいっぱいのはず/の私室を思う/ずっと続いている/玉兎の観察ノート/二足跳びのrhythmを記憶に刷り込んだら/家に戻ろう
編み上げたマフラー/に3ヶ所の失敗/白い空を見上げたら春雷/、キャラメルマキアートの呼気が昇ってゆく
選出作品
作品 - 20160217_697_8630p
- [佳] 日々の錆 - 渚鳥 (2016-02)
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日々の錆
渚鳥