艶かしい光感受性受容器が視神経を通じて見てはいけないアレの端末を脳中枢へと運ぶ。見てはいけないアレの端末であるグロテスクな映像には言葉にしていけない文字である淫らなアナタ自身の当たり障りのない日常的な動作が含まれており、モダンな部屋の壁の色や置かれた家具の配置なども言葉にしていけない文字である淫らなアナタの感性とはまったく関係なく見てはいけないアレの端末は単なる【信号】として時間軸の曖昧な未来へと伝達された。ただそこに別の映像である記憶が無数に紛れているのを見てはいけないアレの端末をすでに脳中枢へと運びおえた言葉にしていけない文字である淫らなアナタは少しも関知していなかった。今しもベッドに横たわる不可視の「見るべきモノ」と文字のない「読むべきモノ」を、昨日の続きを演じるようにまるで理解など無用といった脳天気な顔で言葉にしていけない文字である淫らなアナタは事務的に片づけはじめる。しかし見てはいけないアレの端末は記憶の中では白い砂浜のつづく地球のどこか南の島の海岸でサマーベッドに寝そべっていた。そのとき見てはいけないアレの端末は、赤らんだ嫌らしい顔を少し大きめのサングラスで隠し「すなわち、はげわし、ひげはげわし、みさご、とび、はやぶさの類、もろもろのからすの類、だちょう、よたか、かもめ、たかの類、ふくろう、う、みみずく、むらさきばん、ペリカン、はげたか、 こうのとり、さぎの類、やつがしら、こうもり」と言った。つまり言葉にしていけない文字である淫らなアナタへの愛の告白で、さらに「人がもしその頭から毛が抜け落ちても、それがはげならば清い」とも言った。記憶のなかでは見てはいけないアレの端末は、詩人で魔法使いでもあった。彼が「時よ止まれ」というと時間は止まり、「時よ動け」と言うと時間はふたたび動き出した。たった今、束の間に、この部屋にいて、すべての許されない事柄は、けして言葉にも映像としてのイメージにさえもなりえないタブーの領域に封印されていた。それでも窓の外を覗くと、あの日の波の音ともに見てはけないアレの端末とふたり岬の先端から眺める夕映えの海の景色がよみがえった。彼は言った、「イメージするんだ、今こそ俺の真実を話そう」そしてサングラスを外すと、「いくぶん突飛な喩えだが、俺は優しいキングコングは嫌いだ。なぜなら映画に出てくる奴は偽善そのもので真実からは遠く離れているからだ」そう言うと、彼はしばらく押黙った。言葉にしていけない文字である淫らなアナタは彼がこれからとても重要なことを話そうかどうかいくぶん躊躇していることを悟った。「お願い。言って、どんなことでも。私、びっくりしないわ」すると彼はニヤリと笑った。「じゃあ、もう一度イメージするんだ。つまりその、映画の中では登場しない、隠された、キングコングのアレを」言葉にしていけない文字である淫らなアナタは少し困った顔で言った、「アレって、アレのことかしら? つまり、とんでもなく大きくて、ぶらぶらしている‥‥」見てはけないアレの端末である彼はかぶりを振った、「そんなんじゃない。もっと、もっと、よくじょうして、かたくなった、とてつもなくでかい、アレだよ、アレ‥‥」言葉にしていけない文字である淫らなアナタは、そのとき大波の飛沫のとぶ岬の突端で雄叫びをあげながら胸を叩くキングコングの姿を見た。「見える、見えるわ! つまり、あなたはTVではとても放送できない、天を向いて、そそり立つ、あの股間の‥‥モザイクだったのね」
選出作品
作品 - 20151121_832_8445p
- [優] キングコング岬 - atsuchan69 (2015-11)
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