存在するということ
そこに立つということ
それは紛れもなく敵であるということ
私は隅々まで敵を探し出す
現象の狭間に隠れた見えない真理も
みんな敵なのだから
私は何も信じなくていい
どんなに高潔な倫理も
みな敵なのだから
私は何に従わなくともいい
私は恋人に癒しを求め
美しい自然に癒しを求め
芸術作品に癒しを求めた
だがすぐに気付いたことだが
私を癒すものは同時に私の敵でもあったのだ
私はすぐさま注意深く距離をとり
その距離の確かさだけを
その距離の堅さだけを
心のよりどころとした
敵とは戦う必要はない
表層では敵は全て味方であるし
深層においても敵とは決して戦わない
戦った瞬間
敵は敵ではなくなり
戦いのあとには
敵はもはや無意味な存在となる
世界を有意味なものとするため
敵は敵のままであり続けなければならない
全世界が敵であるため
もはやいかなる裏切りもあり得ない
いかなる権謀術数も不要であり
シンプルに対立だけすればいい
世界は金属の冷たさで私を冷やし続け
私はその硬さと冷たさに
人生の手触りを確かに感じ
人生はこのように単純に進んでいけばいい
選出作品
作品 - 20151102_012_8394p
- [佳] 敵 - zero (2015-11)
* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。
敵
zero