シグレタII
「『死者の書』とかね、タイトルばっか読んでる。後、レビューとかね。しょうじき、なかみなんて、どうでもいいんだよ。むしろその本を読んだ人間が何をどう思うのか、それをどのようにうけいれているのか、いくのか、もしくはうけいれないのか、そういうことに興味があるんだ。多分、どれだけ優れた作品が目の前にあっても、そこにそれを、それらを読むヒトがいて、そこに何かを寄せるヒトがいて、その寄せられたなにかに、なにかを返すヒトがいなければ、こんなものいらないんだよ。
「ウソ
「わかるかい?
「例えば感傷って言って安く縛り直して
そしたらだれも
何もいわなくなるから
この改行みたいに
「てめぇはそこでくたばってろ
「みたいな
きたないことば
きたないってだれがきめた?
だれかがきめた
がいねんや
しそうや
ひゆや
ビニールで出来た川の水を飲めば
ぼくたちがこうしていきているという
実感が持てるよね
「という言葉全てが嘘だった。つまりここにある言葉ははじまりから間違っていた。こういう独白は全て感傷であり、オナニーであって、少し高級に言えばストリップ・ショウであって、これはボクの中にある表現欲であって、つまりオナニーだ。性的興奮のないオナニーである。それをここでさらけ出せることにボクは喜びを感じているし、ボクの作品を通して行われるレスポンスでもダイアローグでもいいけど、そういったもののセックスを画面越しで見ることができてシアワセだ。「幸せだった。と言ってしまえば、関係は終わるかもしれないが、実は終わらないのだよ。
「つながることをやめることはできないのよ。
「さぁ、
「どうでもいいからそこでくたばってろよ
「つまりは
「一度書き始めたニンゲンは
「やめることなんてできないのよ?
「もしくは死んじゃえばいいんだ
「あるいは死ぬしかない
「そんな、簡単に死ぬ死ぬいうから、君は(´・_・`)とかされんじゃない
「ダイジョウブ?
「だから見えを張ってるし、
「だから無関心だし
「チンカスなんだよ
「無関心とか、そんなのなれないし…
「とても美しい
限りなく美しい
けど、
そのうつくしさが
どこに根ざしているのか分からない
「うそ
「わかる
「そこにある
「いいからだまってろよ
「なにこれ?
「感傷だよ
「まちにでればいい
「出ればいいんだ
「書くのをやめろ
「全て感傷
「つまり、幾つかの声だった
「ボクの中に住んでいる沢山のヒトの群れが、多分色んな言葉を声に出して読んでるんです。ボクは俗なイメージでいう多重人格、的な物に侵されているのかもしれません。多重人格って奴は、ちょっと調べただけですけど。俗なイメージでいう、何人もの人格がヒトの頭に同居しているって訳じゃなくて、一つの人格を保てなくなったヒトの精神が崩壊してバラバラになったものが、一見すると二つ以上に見えて、なんとか、つまり元々は一つだったものがパズルのピーズみたいにバラバラになった、みたいな感じなんだそうで
「そんなことどうだっていいでしょ!
「ボクの言ってることは正しいし
「ただしくないし
「間違ってたら恥ずかしいし
「ガキなんだね
「ガキのどこがわるい?
「ガキってなんだよ
「逃げんなよ
「ガキなんだ
「君は病気なんだ
「こんなこと考えてるから、いつも情けないし
「こんなものに価値なんかないし
「ないならかくなよ
「ないからかくなよ
「でもこれしか書けないんだ
「だめ、
「つまらない
「やりなおし
「他人はお前を受容しないし
「する価値もないって
「ままが言ってるんだ
「ままなんていない
「価値ってなんだよ
「こうして問い詰めてった先に残る
「匂いみたいなもんさ
「 」
「そういう行間や空白や句読点が、ボクの全てで
「ウソ
「やっぱりウソなんだよ
「ウソの何がわるい
「若いし
「なによりだめだ
「言葉は
「繋がっているけど、それは網でしかないから、
「その隙間から色々落ちいくんだ
「それが悲しい!
「それは悲しい、
「それは悲しい?
「それか悲しい。
「埋めていかなきゃ
「ボクはシグレタ。語感がいいからって出来た。多分新しい言葉。だれかが使っていた言葉で、一度死んで蘇った言葉かもしれないけど。多分、これを書いた人間が作った新しいことば。そして小さな作品のタイトルになったことば。意味のないことば。それはことばじゃない? そうだね、概念がないから。うそ。あるよ。本当はあるよ。ここに書いてあることがそう、ボクの概念だよ?ここまで積み上げられた言葉全てがシグレタの概念だよ?これ以上小さくするのは無理、できないよ。これが全てだから。ここも今あなたが読んでいる言葉もそうさ、いいとかわるいとか、そういう話じゃないんだよ。だから、明日から使ってください。ボクは誰か、そう他人とかいないとしんじゃうんだよ。あなたが思ってるよりカンタンにね!でもボクはそんなの許さないから
「全てウソだ
シグレタI
3月に降りだした雨は、8月になっても止まない。雨が降り始めた日は、ちょうど雪が降っていた。繋がらない携帯電話を曇り空に向けてかざした。公衆電話に並ぶ人達の行列には沢山の種類の人間がいた。泥だらけの男が10円玉をせびってくる。次にボロボロな服を来た男が、隣町のボランティアへいくための交通費をせびってくる。次にマイクを持った男達が大勢押しかけてきて、何か話しなさいと言った。ありのままのことを喋ると、しかし、それは聞きたいことではなかったと言って男達は別の場所に向かった。ボクは多分若かったのだと、そのとき思った。
地震がきたあの日、と呼ばれるあの日、と名指される日に起きたことが、そうあっけなかったから、ボクはこうしてシグレタが書ける。かけた、
選出作品
作品 - 20150831_459_8276p
- [佳] シグレタ 二篇 - 赤青黄 (2015-08)
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シグレタ 二篇
赤青黄