嫁の騎乗位。
嫁の騎乗位より美しい夕焼けなど
俺は見たことがない。
だから俺の詩には丁寧な描写など
一切必要ない。
そう、
俺の詩は深い闇で
太陽は敵でしかないから
俺の詩は
誰も励まさないし
何にも寄り添わない。
そう、
俺の詩は泣き言ではない。
陽が昇り沈むまで
そう、
夕焼けまでの九時間
そこで
俺は眠る
やっと眠る
笑いながら眠る。
そして
夢の中で
嫁の背中をなぞる
どんな比喩より繊細に
なぞりながら眠る。
旦那の現代詩。
旦那の現代詩より
意味のわからないものはない。
だから私は、
詩について考えたり定義したことなど
一度もないし
詩に励まされるつもりも
一切ない。
旦那は今夜も眠らずに
私の裸でオナニーをしている。
だから私は、
言葉の闇に包まれて
ひとりでセックスをしている。
私は美しい夕焼けを
二人で見たいだけなのに
今夜もひとりでセックスをしている。
だから私は、
現代と名の付くものを言い当てる。
当てたくないのに
すべて言い当ててしまえる。
近い将来
旦那の指が
終わりを告げる。
ポリフェノール。
せやろ
なんも文学的やあらへんで、
こりぁよ
芸術ちゃいまんねん。
離婚でんねん。
いわゆるひとつの離婚でんねんて
ワインちゅうより
レンガみたいな色しとるやろ
町のすべてがよ
ポリフェノールがありそうな夕陽を浴びて
2人はよ
線路沿いを歩いとったわけや
2週間くらい前かな
なんも喋らんと
ただ歩とんねん。
後ろから快速電車きよったら
2人はよ
赤と白に別れるで、
間違いないで、
離婚や
そんな感じしたんや
風に引き裂かれとるんちゃうかな、今頃。
ほんでな
でもな
あれやで、
もしかしたらな
最後にセックスしたかもわからんで、
ありゃあやしいな
あの2人は
やけに文学的なセックスしたかもわからんで、
なんせ最後やからな
しっかし仲良い夫婦やったわ
よう散歩しとったわ
この辺、なんもないけどな
手ぇつないで散歩しとったわ
さびしなるなぁ
ん。
前に一度な
奥さん、ドーナツつくりはってな
わしの家に持って来てくれたんや
ほんでな
旦那さんが詩集を出した言うてな
わし、それ、もろたんや
ちゃんと買うで言うたんやけどな
ほんでな
感想聞かせてくれ言うて
でもわしな、詩なんて読んだことないし
困ってもうたんやけど
読んでみたんよ。
ほな、めっさおもろいやんけって
わしの思てたんとちゃうのよ
やれ、孤独やとか
さびしいだの苦しいだの
死ぬとか
暗いもんやと思てたんや
もしくは、あれや、
がんばれ、みたいな
平等がなんたらかんたら
人間だもん、やればできるよ、みたいな、
詩って、そういんもんやと勝手に思ってたんやなぁ。
ちょっとな
わしには
なんやようわからんかったとこもあるけどな
めっさええやんて思たんや。
比喩とかな
バシッと決まってると、めっさかっこええやん。
現代詩って言うんか
ん。
それな、たまにな、
すらすら読める時があんねんて
ほんまやで、
でな
わしもな
最近な、詩を書いとんねん。
ん。
あんた東京から来たんか?
へー、弟さんかい
確かにちょっと似とるわな、いや、顔やなくて
喋り方とか。
連絡つかんのかいな?
お姉さん見つかるといいな
はよぉ見つかるといいな
ん。
ところでわしの喋り方、ちっと変やろ?
わしな、生まれは埼玉やねん。
そうや、だ埼玉やねん。
でもな、池袋とか、めっさ近いねん。
ま、どうでもええか
でな、お姉さんにもし会ったらな
わしの書いた詩な、読んでくれって伝えてな
ん。
ほれ、これやねん。
てかよ、今、ちょっと読んでくれや
感想聞かせてくれへんか?
ポリフェノールって題名やねん。
どや、かっこええやろ?
えらいシャレとるやろ?
ん。
ダサいか?
逆にダサいか?
だ埼玉ってか?
ん。
誰が川島なお美やねんっ。
ワイン好きちゃうし
比喩やねん。
悲しい比喩やねん。
でもな
内容は悲しないねん。
ん。
てか、のまれへんしな
わしな、ビール党やねん。
知っとるか?
ビールはな、グラスで味が変わるねん。
発泡酒もな
めっさええグラスでのむとな
エビスビールやねん。
いや、ほんまやでっ、
でもな
めっさええ詩ってのはな
グラスでは変わらへん。
どや、ええこと言うたやろ
なんか、それっぽいこと言うたやろ
ん。
たまには、ええこと言うねん、わし。
どや、池上彰みたいやろ
ん。
はよ読めや、感想言えや
ほんで何か質問とかしてくれへんか?
(いい質問ですね、
とか言わせろや
わし、池上彰ちゃうけどな
選出作品
作品 - 20150811_995_8250p
- [優] 文学的やあらへんで、 - 泥棒 (2015-08)
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文学的やあらへんで、
泥棒