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作品 - 20140701_628_7512p

* 著作権は各著者に帰属します。無断転載禁止。


YOU TAKE MY BREATH AWAY。

  田中宏輔



書き止めておいた、メモの切れっぱしが見つかった。
(ガルシア=マルケス『族長の秋』鼓 直訳)

これは詩になるな
(ウィル・ワーシントン『プレニチュード』井上一夫訳)

まだ、詩を作っているの?
(リルケ『ミュンヘンにて』一、水野忠敏訳)

もちろんさ。
(アイザック・アシモフ『ミクロの決死圏』5、高橋泰邦訳)

引用?
(ジョセフィン・テイ『時の娘』3、小泉喜美子訳)

引用さ
(ゼナ・ヘンダースン『血は異ならず』知らずして御(み)使(つか)いを舎(やど)したり、宇佐川晶子訳)

すでにあるものを並べなおす
(グレッグ・イーガン『プランク・ダイブ』山岸 真訳)

それだけだよ。
(ゼナ・ヘンダースン『血は異ならず』月のシャドウ、宇佐川晶子訳)

それでも、それは美しい。
(ポール・プロイス『破局のシンメトリー』一年後、小川 黎訳)

そうではないか?
(ポール・プロイス『破局のシンメトリー』一年後、小川 黎訳)

どれも
(フエンテス『脱皮』第三部、内田吉彦訳)

引用しただけさ。
(アイザック・アシモフ『信念』伊藤典夫訳)

引用だけで
(ルーシャス・シェパード『戦時生活』第三部・10、小川 隆訳)

コラージュを作っていた
(P・D・ジェイムズ『正義』第三部・37、青木久恵訳)

詩さ、詩だ、すべてが詩なんだ。
(ジャック・ケルアック『地下街の人びと』真崎義博訳)

数えきれない詩を書いているんだよ。
(フィッツ=ジェイムズ・オブライエン『手から口へ』大瀧啓裕訳)

彼女は、眉をひそめて、その詩を眺めた。
(グレゴリイ・ベンフォード&デイヴィッド・ブリン『彗星の核へ』上・第二部、山高 昭訳)

あら、これは詩じゃないわよ。韻を踏んでないもの。
(P・D・ジェイムズ『神学校の死』第一部・3、青木久恵訳)

単なる言葉の遊びでしょう?
(ジョセフィン・テイ『時の娘』13、小泉喜美子訳)

これは違う種類の詩なんだ
(P・D・ジェイムズ『神学校の死』第一部・3、青木久恵訳)

一種の無韻詩ね。
(ジョセフィン・テイ『時の娘』13、小泉喜美子訳)

実験詩だ。
(ウォレス・スティヴンズ『アデージア』片桐ユズル訳)

現代詩
(ティム・パワーズ『アヌビスの門』上・第四章、大伴墨人訳)

ちょっとした暇つぶし
(ジョン・クロウリー『エンジン・サマー』大森 望訳)

ただの遊びだよ。
(パオロ・バチガルピ『第六ポンプ』中原尚哉訳)

つまらんものばかりさ。
(ブレッド・ハート『盗まれた葉巻入れ』中川裕朗訳)

ただ楽しみのためだけ。
(ジョン・クロウリー『エンジン・サマー』大森 望訳)

意味はないよ。
(グレゴリイ・ベンフォード『時の迷宮』上・第二部・8、山高 昭訳)

頭の体操なのだ。
(パオロ・バチガルピ『ねじまき少女』下・28、田中一江・金子 浩訳)

あはん。
(ポール・アンダースン『タウ・ゼロ』11、浅倉久志訳)

なにそれ?
(グレゴリイ・ベンフォード『輝く永遠(とわ)への航海』上・3、冬川 亘訳)

ばかげた詩。
(ジョージ・R・R・マーティン『子供たちの肖像』中村 融訳)

軟弱ねえ。
(ジョン・ヴァーリイ『ミレニアム』15、風見 潤訳)

人生をだいなしにしてるわ。
(フィリップ・K・ディック『ブラッドマネー博士』9、阿部重夫・阿部啓子訳)

わたしには、ちんぷんかんぷんだわ
(ジェイムズ・ブリッシュ『暗黒大陸の怪異』I、中村保男訳)

詩集を出したってのは本当なの?
(アントニイ・バージェス『アバ、アバ』1、大社淑子訳)

ああ、
(シェイクスピア『ヘンリー四世 第一部』第三幕・第一場、中野好夫訳)

ばかにされてる感じがする?
(パット・キャディガン『汚れ仕事』小梨 直訳)

詩人がなんの役に立つ?
(ロバート・シルヴァーバーグ『生と死の支配者』1、宇佐川晶子訳)

芸術はなんの役にたつ?
(マラマッド『最後のモヒカン族』加島祥造訳)

詩なんてものはね、だれも読まないの
(ダン・シモンズ『ハイペリオン』上・詩人の物語、酒井昭伸訳)

だれも知らないよ。
(ダン・シモンズ『ハイペリオン』下・探偵の物語、酒井昭伸訳)

そいつのどこがいけないっていうんだ?
(ルーシャス・シェパード『竜のグリオールに絵を描いた男』2、内田昌之訳)

詩には意味なんかないよ。詩は詩なんだ!
(マイク・レズニック『一角獣をさがせ!』8、佐藤ひろみ訳)

それ自体は意味はないものさ。
(R・A・ハインライン『異星の客』第三部・31、井上一夫訳)

無意味なものに意味をもたせてなんになる?
(オースン・スコット・カード『ゼノサイド』下・15、田中一江訳)

何でもない
(ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』第三部・3、御輿哲也訳)

まったく異質なもの同士を組み合わせてみるのが楽しみだった。
(ノヴァーリス『サイスの弟子たち』一、今泉文子訳)

詩人ってなんだか知ってるかい?
(シルヴィア・プラス『ベル・ジャー』5、青柳祐美子訳)

言葉のコレクターなのだよ。
(ミラン・クンデラ『ハヴェル先生の二十年後』12、沼野充義訳)

言葉、言葉、言葉。
(シェイクスピア『ハムレット』第二幕・第二場、野島秀勝訳)

言葉とはなにか?
(ウィリアム・S・バロウズ『爆発した切符』オールド・ドクターを二度呼べ、飯田隆昭訳)

詩人にとって、詩は限定された道具の制約をうけているがゆえに、芸術となるのだ。
(ノヴァーリス『青い花』第一部・第八章、青山隆夫訳)

体験したことのない人生を体験し、経験しなかったことを経験できる
(スタニスワフ・レム『泰平ヨンの航星日記』第二十一回の旅、深見 弾訳)

言葉とはなにか?
(ウィリアム・S・バロウズ『爆発した切符』オールド・ドクターを二度呼べ、飯田隆昭訳)

言葉、言葉、言葉。
(シェイクスピア『ハムレット』第二幕・第二場、野島秀勝訳)

体験したことのない人生を体験し、経験しなかったことを経験できる
(スタニスワフ・レム『泰平ヨンの航星日記』第二十一回の旅、深見 弾訳)

言葉とはなにか?
(ウィリアム・S・バロウズ『爆発した切符』オールド・ドクターを二度呼べ、飯田隆昭訳)

ぼくが語りそしてぼくが知らぬそのことがぼくを解放する。
(ジャック・デュパン『蘚苔類』3、多田智満子訳)

もう詩を書く必要はないんだ──ぼくはいま詩を生きている。
(ティム・パワーズ『石の夢』下・第二部・第十八章、浅井 修訳)

そう、
(タビサ・キング『スモール・ワールド』8、みき 遙訳)

それで、幸せなの?
(クリフォード・D・シマック『法王計画』16、美濃 透訳)

幸せ? それはわからない。
(クリフォード・D・シマック『法王計画』16、美濃 透訳)

幸せだったのだろうか?
(サバト『英雄たちと墓』第I部・20、安藤哲行訳)

たいした詩人ですこと
(オースン・スコット・カード『死者の代弁者』1、塚本淳二訳)

わたしの人生もそんな単純だったらいいのに。
(チャールズ・ストロス『シンギュラリティ・スカイ』空間的地平線、金子 浩訳)

さて、
(ウィリアム・S・バロウズ『シティ・オブ・ザ・レッド・ナイト』第二部、飯田隆昭訳)

どうだろう、
(J・ティプトリー・ジュニア『大きいけれども遊び好き』伊藤典夫訳)

きみはだれに、何になるのかね?
(ゴア・ヴィダール『マイラ』33、永井 淳訳)

いま書いている詩、聞いてみたくない?
(オーガステン・バロウズ『ハサミを持って突っ走る』青野 聰訳)

その必要はないわ。
(クリストファー・プリースト『スペース・マシン』6・4、中村保男訳)

あの雲をごらんよ
(スティーヴン・バクスター『虚空のリング』上・第一部・4、小木曽絢子訳)

雲が動いているのを見て
(プイグ『赤い唇』第九回、野谷文昭訳)

あの白いフワフワしたやつ
(クリフォード・D・シマック『宇宙からの訪問者』40、峰岸 久訳)

目を離したら、雲の様子を正確に形容できない
(ジャック・ウォマック『ヒーザーン』2、黒丸 尚訳)

一片一片が瞬間ごとにおのおのべつの動きをする。
(モンテーニュ『エセー』第II巻・第1章、荒木昭太郎訳)

一瞬一瞬をさまざまな消息を経ながら新たに生きている。
(トマス・M・ディッシュ『歌の翼に』16、友枝康子訳)

おのおのの瞬間は、それにつづく他の瞬間を導くためにのみ、あらわれる。
(サルトル『嘔吐』白井浩司訳)

一つ一つの動きが次の動きにつながっていく。
(ロジャー・ゼラズニイ『ユニコーンの徴(しるし)』3、岡部宏之訳)

その動作それ自体が詩であり
(ブライアン・W・オールディス『中国的世界観』12、増田まもる訳)

あらゆる動きが永劫を暗示している。
(ボブ・ショウ『メデューサの子ら』14、菊地秀行訳)

大切なのは活発に動くことだ。
(D・J・コンプトン『人生ゲーム』2、斎藤数衛訳)

留まることは死ぬこと。流れていくことは生きること。
(グレゴリイ・バンフォード『時空と大河のほとり』大野万紀訳)

誰にも永遠を手にする権利はない。
(フエンテス『脱皮』第三部、内田吉彦訳)

だが、ぼくたちの行為の一つ一つが永遠を求める
(フエンテス『脱皮』第三部、内田吉彦訳)

あらゆるものがなんとあふれんばかりに戻ってくることか──
(トマス・M・ディッシュ『334』334・第三部・24、増田まもる訳)

何十年も前のさまざまな記憶の断片、昔の顔や昔の情感が、
(トマス・M・ディッシュ『334』334・第三部・24、増田まもる訳)

いま、詩となるのだ。
(トマス・M・ディッシュ『334』334・第三部・24、増田まもる訳)

魂の流出は、幸福である、ここには幸福がある、
(ホイットマン『大道の歌』8、木島 始訳)

しかも、これには際限がなかった。
(ジョン・クロウリー『リトル、ビッグ』I・〔2〕・I、鈴木克昌訳)

雲がむくむくと形を変え、
(P・D・ジェイムズ『わが職業は死』第三部・1、青木久恵訳)

日の光が断続的に野原を走り、屋根や窓に反射する。
(P・D・ジェイムズ『わが職業は死』第三部・1、青木久恵訳)

それは美しい。
(ポール・プロイス『破局のシンメトリー』一年後、小川 黎訳)

あの雲をごらんよ
(スティーヴン・バクスター『虚空のリング』上・第一部・4、小木曽絢子訳)

ウサギがいるよ。
(ジェイムズ・P・ブレイロック『魔法の眼鏡』第三章、中村 融訳)

ウサギは時間のない現在に入りこみ、その目は大きく見ひらかれて、われは存在するというものとなる。
(D・H・ロレンス『翼ある蛇』上・11、宮西豊逸訳)

実在のものも架空のものも
(ジェラルド・カーシュ『ブライトンの怪物』吉村満美子訳)

兎は何百といる。
(ケリー・リンク『石の動物』柴田元幸訳)

森からの幾百もの顔。
(ウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』第一部・2、黒丸 尚訳)

顔、顔、顔。
(フランク・ハーバート『デューン砂漠の神皇帝』第二巻、矢野 徹訳)

空間がさまざまな顔で満たされるのだ。
(ジョン・ベリマン『ブラッドストリート夫人賛歌』48、澤崎順之助訳)

雲がむくむくと形を変え、
(P・D・ジェイムズ『わが職業は死』第三部・1、青木久恵訳)

空はまた奥深くなり、ひろびろと視線をあそばせてくれる。
(ホリア・アラーマ『アイクサよ永遠なれ』 17、住谷春也訳)

観察の正確さは思考の正確さに相当する。
(ウォレス・スティヴンズ『アデージア』片桐ユズル訳)

一インチでも距離をおくと百マイルも遠ざかってしまうということもあるのだ
(D・G・コンプトン『人生ゲーム』9、斎藤数衛訳)

見ようとしているものが何だかわかったとたんに、
(シオドア・スタージョン『神々の相克』村上実子訳)

見えなかったものがはっきり見えてくるといった、視覚の不思議な現象がある。
(シオドア・スタージョン『神々の相克』村上実子訳)

見たいと思うものが見える
(スティーヴン・バクスター『虚空のリング』上・第一部・5、小木曽絢子訳)

実在した光景であり、同時に実在しなかった光景でもあった。
(スタニスワフ・レム『星からの帰還』6、吉上昭三訳)

存在の確かさ
(ジョアナ・ラス『フィーメール・マン』第七部・V、友枝康子訳)

具体的な形はわれわれがつくりだす
(ロバート・シルヴァーバーグ『いばらの旅路』25、三田村 裕訳)

考えたことがすぐに形をとるのだ。
(ロバート・ブロック『クライム・マシン』佐柳ゆかり訳)

解読するとは生みだすこと
(コルターサル『石蹴り遊び』その他もろもろの側から・71、土岐恒二訳)

自分の作り出すものであって初めて見えもする。
(エマソン『霊の法則』酒本雅之訳)

見ることはまったく能動的な──徹底して形成的な──行為なのだ。
(ノヴァーリス『断章と研究 一七九八年』今泉文子訳)

だが、
(フエンテス『脱皮』第三部、内田吉彦訳)

どんなものも、くりかえされれば月並みになる、
(R・A・ラファティ『スナッフルズ』1、浅倉久志訳)

どんなに美しい風景でも、しばらくすると飽きてしまうからだ。
(ジョージ・R・R・マーティン『フィーバードリーム』5、増田まもる訳)

散り散りになった雲の切れっぱしが流れていった。
(フアン・ルルフォ『ペドロ・パラモ』杉山 晃・増田義郎訳)

どうしてあれがわたしでありえよう。
(ジョン・ベリマン『ブラッドストリート夫人賛歌』27、澤崎順之助訳)

ぼくは自分が視るものに自分を視る
(オクタビオ・パス『白』鼓 直訳)

イメージのないところに苦痛もない──。
(ウィリアム・バロウズ『ノヴァ急報』中国人の洗濯屋、諏訪 優訳)

「この白さに──」と孟子は言った
(エズラ・パウンド『詩篇』第八十篇、新倉俊一訳)

「この白さになにが加えられるだろうか」
(エズラ・パウンド『詩篇』第八十篇、新倉俊一訳)

その白さにどんな白さを加えられようか
(エズラ・パウンド『詩篇』第七十四篇、新倉俊一訳)

更に多くの「空白」?
(ジェイムズ・メリル『ページェントの台本』上・&、志村正雄訳)

その言葉そのものに?
(サミュエル・R・ディレーニイ『バベル-17』第一部・2、岡部宏之訳)

白さと白とを区別すること
(リルケ『あの墓碑以上のことを……』高安国世訳)

言葉はすべてに違う意味合いをもちこむ
(J・G・バラード『ハイ‐ライズ』13、村上博基訳)

思いもしなかったような意味になって出てくることがある
(シオドア・スタージョン『[ウィジェット]と[ワジェット]とボフ』9、若島 正訳)

なにが起きるかわからないということだ。
(ジェイムズ・P・ホーガン『ミクロ・パーク』26、内田昌之訳)

まえもって知ることはできないのだ。
(E・E・ケレット『新フランケンシュタイン』田中 誠訳)

読書の楽しさは不確定性にある──
(ジェイムズ・P・ホーガン『ミクロ・パーク』26、内田昌之訳)

兎は、われわれを怯えさせはしない。
(ヴァレリー『倫理的考察』川口 篤訳)

しかし、兎が、思いがけず、だし抜けに飛び出して来ると、われわれも逃げ出しかねない。
(ヴァレリー『倫理的考察』川口 篤訳)

愛はまったく思いがけないときにやってくるもの
(リチャード・コールダー『デッドボーイズ』第6章、増田まもる訳)

まるで兎のようだ。
(マイケル・マーシャル・スミス『スペアーズ』第三部・21、嶋田洋一訳)

何が「きょう」を作るのか
(ジェイムズ・メリル『ページェントの台本』下・NO、志村正雄訳)

ただの偶然ではないはず。
(ロジャー・ゼラズニイ『キャメロット最後の守護者』浅倉久志訳)

こんどは何を知ることになるだろう?
(クリフォード・D・シマック『中継ステーション』5、船戸牧子訳)

偶然とはなんだと思う?
(グレアム・チャーノック『フルウッド網(ウエツブ)』美濃 透訳)

偶然だって?
(ガデンヌ『スヘヴェニンゲンの浜辺』20、菅野昭正訳)

偶然とはなんだと思う?
(グレアム・チャーノック『フルウッド網(ウエツブ)』美濃 透訳)

偶然こそ、私たちの生の偉大な創造者というべき神である。
(プリニウス『博物誌』第二十七巻・第二章、澁澤龍彦訳)

人間もまた偶然の存在だ。
(ダン・シモンズ『真夜中のエントロピー・ベッド』嶋田洋一訳)

人間こそすべてだ、
(エマソン『アメリカの学者』酒本雅之訳)

それは一つの純粋な詩なのだ。
(ロバート・シルヴァーバーグ『内死』1、中村保男・大谷豪見訳)

なぜ「きみを愛している」といえなかったのか?
(リチャード・コールダー『アルーア』浅倉久志訳)

非常に心を動かされる引用だな
(フランク・ハーバート『デューン 砂の惑星』第2巻、矢野 徹訳)

誰を引用しているのだ?
(ジェイムズ・メリル『ページェントの台本』下・NO、志村正雄訳)

だが真理はどこかちがうところにある。
(ホリア・アラーマ『アイクサよ永遠なれ』24、中原尚哉訳)

本を閉じることだな。
(アヴラム・デイヴィッドスン『さもなくば海は牡蠣でいっぱいに』若島 正訳)

感傷性は弱さと苦痛への好みを前提としている。
(リルケ『フィレンツェ』森 有正訳)

明らかに道をまちがえてしまった人間なのだ。
(カフカ『判決』丘沢静也訳)

彼は手から石を落した。
(ムージル『若いテルレスの惑い』吉田正巳訳)

落ちる石を見る。
(ロジャー・ゼラズニイ『影のジャック』6、荒俣 宏訳)

彼は
(ムージル『若いテルレスの惑い』吉田正巳訳)

道を杖(つえ)でつついた。
(J・リッチー『無痛抜歯法』駒月雅子訳)

その瞬間、
(ジェラルド・カーシュ『死こそわが同士』駒月雅子訳)

石が
(キム・スタンリー・ロビンスン『荒れた岸辺』上・第一部・1、大西 憲訳)

空中でとまった。
(ゼナ・ヘンダースン『血は異ならず』月のシャドウ、宇佐川晶子訳)

感電したウサギのように
(ジョアナ・ラス『フィーメール・マン』第七部・II、友枝康子訳)

ぼくはいっそうはっきりと石を見る、ことに影を、
(アンドレ・ブーシェ『白いモーター』12、小島俊明訳)

あるひとつの思考は、どのくらいの時間、持続するものなのだろうか?
(ガデンヌ『スヘヴェニンゲンの浜辺』12、菅野昭正訳)

原子ひとつを(、、、、、、)同じ場所でじっとさせておくだけのために、どれだけの力が必要だと思う?
(グレッグ・イーガン『移相夢』山岸 真訳)

一貫した意識をもつひとつの自己が、時間のなかで存続しうる(、、、)と思うか──
(グレッグ・イーガン『移相夢』山岸 真訳)

その意識の周辺じゅうで数十億の心の断片が形成されたり消えたりすることなしに?
(グレッグ・イーガン『移相夢』山岸 真訳)

彼は
(ムージル『若いテルレスの惑い』吉田正巳訳)

道を杖(つえ)でつついた。
(J・リッチー『無痛抜歯法』駒月雅子訳)

その瞬間、
(ジェラルド・カーシュ『死こそわが同士』駒月雅子訳)

同時に
(フランク・ハーバート『デューン 砂丘の子供たち』第2巻、矢野 徹訳)

あらゆる場所に存在する
(フランク・ハーバート『デューン 砂丘の子供たち』第2巻、矢野 徹訳)

石が
(キム・スタンリー・ロビンスン『荒れた岸辺』上・第一部・1、大西 憲訳)

落ちる。
(ゲルハルト・ケップフ『ふくろうの眼』第二十四章、園田みどり訳)

なぜ人間には心があり、物事を考えるのだろう?
(イアン・ワトスン『スロー・バード』佐藤高子訳)

ひとつの名前が
(ガデンヌ『スヘヴェニンゲンの浜辺』20、菅野昭正訳)

あらゆる場所となる
(イアン・ワトスン『エンベディング』第八章、山形浩生訳)

もうひとつの名前を
(ガデンヌ『スヘヴェニンゲンの浜辺』20、菅野昭正訳)

ちがう名前を
(アーシュラ・K・ル・グイン『記憶への旅』小尾芙佐訳)

引きつれてきた。
(ガデンヌ『スヘヴェニンゲンの浜辺』20、菅野昭正訳)

すべてが記憶されていたのか?
(グレッグ・ベア『女王天使』下・第二部・54、酒井昭伸訳)

思い出すことのなかった物事を呼び覚まし、
(シオドア・スタージョン『ヴィーナス・プラスX』大久保 譲訳)

過去の体験のイメージや感触や匂いや色を驚くほど鮮明に頭の中に送り込む
(シオドア・スタージョン『ヴィーナス・プラスX』大久保 譲訳)

このできごとのどこまでが現実にあったことだ?
(グレッグ・ベア『女王天使』下・第二部・54、酒井昭伸訳)

これはおれが即興で作っている話か、それとも夢なのか?
(グレッグ・ベア『女王天使』下・第二部・54、酒井昭伸訳)

なぜ人間には心があり、物事を考えるのだろう?
(イアン・ワトスン『スロー・バード』佐藤高子訳)

その意味を知るためには、人は経験を通りすぎていかなくてはいけないし、
(フランク・ハーバート『デューン 砂漠の異端者』第3巻、矢野 徹訳)

それでもその意味は人の目の前で変化する。
(フランク・ハーバート『デューン 砂漠の異端者』第3巻、矢野 徹訳)

人間であるというのは、いつもいつも変化しているということなんだ。
(ソムトウ・スチャリトクル『しばし天の祝福より遠ざかり……』6、伊藤典夫訳)

変化だけがわたしを満足させる。
(モンテーニュ『エセー』第III巻・第9章、荒木昭太郎訳)

varietas delectate
變化は人を〓ばす。
(『ギリシア・ラテン引用後辭典』Cic. N.D.I, 9, 22.)

変化は嬉しいものなのだ。
(ホラティウス『歌集』第三巻・二九、鈴木一郎訳)

それは多様さを把(は)握(あく)するということだろう。
(モンテーニュ『エセー』第III巻・第9章、荒木昭太郎訳)

きみは多義性を頑迷に愛するんだな、
(ジェイムズ・サリス『蟋蟀の眼の不安』野口幸夫訳)

きみはロマンティストだ。
(J・L・ボルヘス『死者たちの会話』鼓 直訳)

愛ならば、すんなりと受け入れてしまう
(チャールズ・ボーモント『レディに捧げる歌』矢野浩三郎訳)

我々は自分に欠けているものを愛するとプラトンは言った。
(ジョアナ・ラス『フィーメール・マン』第七部・II、友枝康子訳)

また増えてるのかい?
(ボブ・ショウ『メデューサの子ら』2、菊池秀行訳)

結局これもまた夢なのではないだろうか。
(シェリー・プリースト『ボーンシェイカー』26、市田 泉訳)

きみはわれわれがどうも間違った兎を追いかけているような気はしないかね?
(J・G・バラード『マイナス 1』伊藤典夫訳)

兎をつかまえにいけよ
(ピーター・ディキンスン『緑色遺伝子』第三部・9、大瀧啓裕訳)

なぜ「きみを愛している」といえなかったのか?
(リチャード・コールダー『アルーア』浅倉久志訳)

いい詩だよ、覚えてるかね?
(キム・スタンリー・ロビンスン『荒れた岸辺』下・第三部・18、大西 憲訳)

愛ならば、すんなりと受け入れてしまうわ。
(チャールズ・ボーモント『レディに捧げる歌』矢野浩三郎訳)

あなたは引用がお得意だから。
(フエンテス『脱皮』第二部、内田吉彦訳)

本当の愛にはお芝居がつきものだし、そのお芝居を別のものに変えてしまうものよ。
(チャールズ・ボーモント『レディに捧げる歌』矢野浩三郎訳)

こわされるために作られるものだってあるのよ
(フィリス・ゴットリーブ『オー・マスター・キャリバン!』9、藤井かよ訳)

作家は文学を破壊するためでなかったらいったい何のために奉仕するんだい?
(コルターサル『石蹴り遊び』その他もろもろの側から・99、土岐恒二訳)

自分の人生をそこまで破壊するからには過激でなくてはなるまい?
(マイクル・スワンウィック『大潮の道』10、小川 隆訳)

だけど、
(イアン・マクドナルド『キャサリン・ホイール(タルジスの聖女)』古沢嘉通訳)

だれがだれの夢なのか。
(デイヴィッド・ブリン『有意水準の石』中原尚哉訳)

わたしたちのどちらが、本当に他者を作り出しているのだろう?
(フランク・ハーバート『デューン 砂漠の異端者』第3巻、矢野 徹訳)

このいずれも詩のなかにはないのだ!
(ナボコフ『青白い炎』註釈、富士川義之訳)

詩ではない?
(トマス・M・ディッシュ『キャンプ・コンセントレーション』一冊目・六月三日、野口幸夫訳)

きみも詩を書いてるのか?
(ティム・パワーズ『石の夢』上・第一部・第八章、浅井 修訳)

あはん。
(ポール・アンダースン『タウ・ゼロ』11、浅倉久志訳)

ばかばかしい。
(フィリップ・ホセ・ファーマー『気まぐれな仮面』5、宇佐川晶子訳)

あたしをどんな女の子だと思ってるの?
(ケリー・リンク『靴と結婚』金子ゆき子訳)

あなたのコレクションの一部になれというの?
(リチャード・コールダー『デッドボーイズ』第2章、増田まもる訳)

うるさい。意味もわからないくせに。
(ゼナ・ヘンダースン『光るもの』山田順子訳)

なんていう舌だ!
(ノーマン・メイラー『鹿の園』第二部・9、山西英一訳)

人間五十三歳にもなると、もうほとんど他人が必要でなくなる。
(ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』丹治 愛訳)

おまえたちなんかいなくてもいいんだ
(ロバート・シルヴァーバーグ『内側の世界』3、大久保そりや・小川みよ訳)

なんだかをかしい。
(川端康成『たんぽぽ』)

おかしいかい?
(ロバート・シルヴァーバーグ『ゴーイング』2、佐藤高子訳)

ヒステリーのおかま(、、、)みたい
(P・D・ジェイムズ『黒い塔』8・1、小泉喜美子訳)

おかまだって?
(ルーシャス・シェパード『戦時生活』第二部・7、小川 隆訳)

ばか!
(ブライアン・W・オールディス『地球の長い夜』第一部・10、伊藤典夫訳)

ぼくは
(ロジャー・ゼラズニイ『伝道の書に薔薇を』2、大谷圭二訳)

数えきれない詩を書いているんだ
(フィッツ=ジェイムズ・オブライエン『手から口へ』大瀧啓裕訳)

詩だ。
(ウォレス・スティヴンズ『アデージア』片桐ユズル訳)

そりゃ、
(サミュエル・R・ディレイニー『ノヴァ』6、伊藤典夫訳)

詩の才能がないことは知っているよ。
(フリッツ・ライバー『『ハムレット』の四人の亡霊』中村 融訳)

詩人として、たいした才能はないかもしれない──
(ウィリアム・ネイバーズ『平和このうえもなし』3、黒丸 尚訳)

死後の名声は現世のそれ以上に価値はない。
(J・L・ボルヘス『死者たちの会話』鼓 直訳)

だけど
(サミュエル・R・ディレイニー『ノヴァ』6、伊藤典夫訳)

ぼくにとってこれが人生のすべてだった。
(グレッグ・イーガン『ディアスポラ』第三部・8、山岸 真訳)

これは愛の行為だった。
(ポピー・Z・ブライト『ロスト・ソウルズ』第二部・21、柿沼瑛子訳)

ほかになにがあると思ってるんだい?
(ブライアン・オールディス『子供の消えた惑星』2、深町真理子訳)

ほかになにができる?
(ジョン・クロウリー『エンジン・サマー』大森 望訳)

なにが気に入らないんだ?
(ロバート・A・ハインライン『未知の地平線』14、斎藤伯好訳)

詩は優雅で空虚な欺瞞だった。
(ルーシャス・シェパード『緑の瞳』4、友枝康子訳)

ああ、そこここに幻術の穴。
(ランボー『飾画』眠られぬ夜III、小林秀雄訳)

幾つもの砂浜に、それぞれまことの太陽が昇り、
(ランボー『飾画』眠られぬ夜III、小林秀雄訳)

そのときどきの太陽を沈めたのだった。
(ディラン・トマス『葬式のあと』松田幸雄訳)

あら? 傷つけてしまったかしら?
(リチャード・コールダー『デッドガールズ』第四章、増田まもる訳)

早く死んでくれればいいのに!
(フランク・ハーバート『デューン 砂漠の神皇帝』第3巻、矢野 徹訳)

詩句を書くこと、それもまた詩から逃れるひとつの手段ですよ
(ガデンヌ『スヘヴェニンゲンの浜辺』18、菅野昭正訳)

そういうことは考えないのさ。
(アン・ビーティ『駆けめぐる夢』亀井よし子訳)

すでにあるものを並べなおす
(グレッグ・イーガン『プランク・ダイブ』山岸 真訳)

好きなように世界が配列できるのだ
(スタニスワフ・レム『天の声』17、深見 弾訳)

世界が一変するだろう。
(ミシェル・トュルニエ『すずらんの地』村上香住子訳)

すべてが現実になる。
(フレデリック・ポール&C・M・コーンブルース『クエーカー砲』3、井上一夫訳)

どういう意味?
(スティーヴン・バクスター『虚空のリング』下・第五部・30、小木曽絢子訳)

どういう意味なの?
(ルーシャス・シェパード『スペインの教訓』小川 隆訳)

頭がおかしいんじゃない?
(サラ・A・ホワイト『闇の船』第二部・33、赤尾秀子訳)

あなたは人生についてなにを知ってるの?
(アントニイ・バージェス『ビアドのローマの女たち』4、大社淑子訳)

何を愛しているの。
(グレゴリイ・ベンフォード『ミー/デイズ』大野万紀訳)

言葉よ。
(マイケル・マーシャル・スミス『スペアーズ』第三部・19、嶋田洋一訳)

ただの言葉にすぎないわ。
(グレゴリイ・ベンフォード『光の潮流』上・第二部・6、山高 昭訳)

それが楽しみなの?
(グレゴリイ・ベンフォード『光の潮流』上・第二部・6、山高 昭訳)

どうでもよくない?
(ジーン・ウルフ『ピース』4、西崎 憲・館野浩美訳)

あなた、どうかしてる。
(ジュリエット・ドゥルエの書簡、ヴィクトル・ユゴー宛、1833年、松本百合子訳)

あなたの人生はどうなってるの?
(カミラ・レックバリ『氷姫』V、原邦史朗訳)

詩人?
(アルフレッド・ベスター『消失トリック』伊藤典夫訳)

ちがうよ。ぼくは詩人じゃない。
(ダン・シモンズ『ハイペリオン』下・探偵の物語、酒井昭伸訳)

物事はそんなに単純じゃないさ。
カミラ・レックバリ『氷姫』III、原邦史朗訳)

単純な答えなどはない。
(アルフレッド・ベスター『虎よ、虎よ!』第二部・14、中田耕治訳)

心がどんな材料で出来ているか
(シェイクスピア『リア王』第三幕・第六場、野島秀勝訳)

愛ね。
(P・D・ジェイムズ『策謀と欲望』第二章・15、青木久恵訳)

愛するって、人間を孤独にするものなんだわ、
(ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』富田 彬訳)

もうたくさん。
(フィリップ・ホセ・ファーマー『階層宇宙の創造者』14、浅倉久志訳)

「呪文は、手品師の帽子に入っている兎のためじゃなくて、お客のためなんだよ」
(オラフ・ステープルドン『オッド・ジョン』14、矢野 徹訳)

きみはそれを知っている人間のひとりかね?
(ノーマン・メイラー『鹿の園』第六部・28、山西英一訳)

あなたの引用は意味がずれてるわよ、
(ナンシー・クレス『ベガーズ・イン・スペイン』4、金子 司訳)

欲しいのはただ、ほんのささやかな、人間らしい人生よ
(P・D・ジェイムズ『黒い塔』3・4、小泉喜美子訳)

寝るわ、今すぐ。
(ゼナ・ヘンダースン『血は異ならず』帰郷、宇佐川晶子訳)

もうあっちへ行っておねんねでしょ?
(キリル・ボンフィリオリ『深き森は悪魔のにおい』5、藤 真沙訳)

孤独であることを学びなさい。
(フィリップ・K・ディック&レイ・ネルスン『ガニメデ支配』12、佐藤龍雄訳)

ちらちらと
(フランク・ハーバート『デューン砂漠の神皇帝』第3巻、矢野 徹訳)

かすかに見える影──あれは雲だろうか。
(ダン・シモンズ『ハイペリオン』下・領事の物語、酒井昭伸訳)

淡い雲
(アン・ビーティ『ウィルの肖像』ウェイン・20、亀井よし子訳)

青空に溶け込む雲。
(ナボコフ『青白い炎』註釈、富士川義之訳)

またウサギかな?
(ジェイムズ・アラン・ガードナー『プラネットハザード』上・5、関口幸男訳)

vel capillus habet umbram suam.
一本の頭髪さへその影をもつ。
(『ギリシア・ラテン引用語辭典』)

知恵は影の影にすぎない
(エズラ・パウンド『詩篇』第四十七篇、新倉俊一訳)

然り、然り、然り。
(ロバート・シルヴァーバーグ『内死』25、中村保男・大谷豪見訳)

quod semper movetur, aeternum est.
常に動くものは、永久なり。
(『ギリシア・ラテン引用後辭典』)

永遠に不変なものは、変化するものにおいてしか、表現できない。
(ノヴァーリス『断章と研究 1799-1800年』[705]、今泉文子訳)

空がない。
(P・D・ジェイムズ『わが職業は死』第四部・9、青木久恵訳)

空には雲ひとつない。
(ダン・シモンズ『ハイペリオン』下・領事の物語、酒井昭伸訳)

空には
(クリフォード・D・シマック『宇宙からの訪問者』11、峰岸 久訳)

もう一匹もウサギはいない。
(ジョン・コリア『少女』村上哲夫訳)

ぼくを視る ぼくが視るもの
(オクタビオ・パス『白』鼓 直訳)

ウサギはまばたきもせずにてのひらにうずくまっていた。
(ゼナ・ヘンダースン『血は異ならず』月のシャドウ、宇佐川晶子訳)

どうしてこんなところに?
(コードウェイナー・スミス『西欧化学はすばらしい』伊藤典夫訳)

ふざけた夢だ。目を覚まさなくっちゃ。
(ウィリアム・コッツウィンクル『バドティーズ大先生のラブ・コーラス』13、寺地五一訳)

文学極道

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