冬鳥の啼く声も掠れ
野火煙る薄闇に
遠い鐘の音とともに
虚ろに舞う、
まばゆい欠片たち
山颪(おろし)の風に攫われる
か細い梢の一瞬の落花、
土に眠る豊かな彩りと
ひややかな水の命を
小さな花の色に映して
雪の果てに颯爽と散り、
蘗(ひこばえ)の匂う野山にも咲く
あれは月夜に朧に散った花弁
冴えた風のうごくさまに倣い、
止め処なく空谷を埋める
淡く紅をさした白無垢の、
ふるえる花唇のむごく幽かな血の色
静やかに息尽きる幻、その刹那に
光滲む雲肌の襖をひらけば
然も絢爛とひろがる春、桜絵巻
選出作品
作品 - 20140327_298_7374p
- [佳] 雲肌の襖 - atsuchan69 (2014-03)
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雲肌の襖
atsuchan69