いのちが鳴く
梯子をのぼると
つやつや照る屋根から
声はきこえた
そっと瓦を剥ぐ
と
ひらかれるはずのなかった
藁の床が光った
うら返った瓦の
釉薬のない生地は鉄錆びの色
伸びあがる
ふるふると
つんのめった雛の脚
ピンク色の鉤形には羽根もない
ひらききった
二個のくちは黄色いひし形なのだ
これらはくちなのだ
かさなるよう
透きとおる肌は戯れる
ピンクの頭骨に産毛生え
血がかよう
眼なるところは黒く
なんと大きく
薄い肉の膜
蓮のかたちに広げた
わたしのかたい手のひらの中で
うごいている
ぷっと膨れた腹に
つまっている
わたしの手よりも
温かなもの
選出作品
作品 - 20140303_945_7338p
- [優] 生きる - 深尾貞一郎 (2014-03)
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生きる
深尾貞一郎