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作品 - 20140116_916_7243p

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待ち惚け

  腰越広茂



まちぼうけをしている
霊園のお墓のなかで
白白と明ける白骨のわたしは
時時
霊園の枯れた草陰から歩き出して
近くの空き地にいき
忘れ去られてペンキのはがれた木製のベンチで
しずしずとひなたぼっこをしている
来るはずのない薄墨色をした歴史の
ずっとむかしの一点に
咲いたみかんが実るのを
いまも待っているのです
しんと時の尽きるまで
いまも
あなたは
ふしめがちにほの暗くほほえむ
つみとったみかんの花を押し花にして
まちぼうけをしている
白白と明けた白骨のわたしを
のっぺりとしてじんわりとする 青空広く
おひさまがにっこり照らしているか
きらりきらりと 風は透けて
青い草は戦いでいるか
墓石はつめたく苔むして
ひんやりと息をしている
ひっそりとした風光を
記憶した初夏の
木洩れ日は影を孕み いまだ沈黙している

文学極道

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