ブルーの絵の具で辺り一面塗りたくって、何も見えないようにしてしまえばいいと君は言う。ぼくには返す言葉がない。きっと君の目の中まですっかり青くなっていそうだから。君の目は地球のように青く、世界を包み込んでいるだろう、辺り一面がブルーになってしまったときには。対話とは何か、と君が言う。そのときまでに考えておかなくてはならない、君が沈黙し続けた分の時間が、ブルーの色彩となって辺りを埋め尽くすその理由を。ぼくには返す言葉もない。これはさっきから繰り返していることだ。どうしても君の質問の意味がわからないからね。本当のことを言うなら、君が喋っているのかどうかさえわからないんだ。君のブルーの唇はその周りのブルーに溶け込んで、白い歯がちらちらと見えているけれども。ただそれだけで、ぼくには何も聞こえない。何も聞こえない状況におかれた人間の不安について君は語るだろうか? 語るより先にこの青々とした道を渡ってみせる方がずっとたやすい。もちろん青を背景に青い体の君の姿はよく見えないけれども。これは見せ物じゃないんだ。これこそが本当の対話なんだと君はぼくを説得しようとする。けれどもぼくにはやはり返す言葉がない。答えてしまったら説得されてしまったのと同じことになってしまうからね。ブルーと言えば昔、青色本というのがあったけど、ひょっとするとこの青々とした世界観は、その本から少しだけ色を借りてきているためなのかもしれない。そう思ったところで何も変わらない。語り得ないことについては沈黙しなければならない。でもそれでもこの青さについては語りうるような気がしている。いやもう十分語ってしまったからこれ以上語れないのだという気がする。なあもう少しだけ口にしてもいいんじゃないか? そう君は言う。そうだなこの哲学的な青さの中で、君は何を語り得るだろう……。
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選出作品
作品 - 20140113_898_7240p
- [佳] ブルー - はかいし (2014-01)
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