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作品 - 20140104_805_7229p

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モール

  はなび



ぼくがアスピリンをガリガリ噛み砕くように
あるいている と彼女が言うので

ぼくは立ち止まり噛み砕いた 
しろくて苦くて
ぼそぼそしていて それから

さいきんはやりの唾液みたいな 泡のつめたい
恐ろしいような料理 
の隙間 
を呈した


2時間前にI氏は仕事をぬけ
クリスマスセールに行ったまま
くびにぶらさがった
名札がきゅうに
さかさになって

あんな唾液みたいな泡みたいな
あんたみたいなひとは
灼けたゴムみたいな
いやな匂いだと言った

ぼくは

モールをあるいていると
いつまでもモールが続いていて
でられない

夢を見ると言った

彼女は映画を見て帰ると言う

映画館ではおそろしいくらい古い映画が上映されていて
女たちはしろく 男たちはくろかった

カエルが車にひかれるところで皆
スピーカーから
潰される音が 
しずかに湿って響くのを
官能的と感じて

しばし
うっとりする
空間があった

それは
ある種の
結界かも
しれない

文学極道

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